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「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる。女性は競争意識が強く、誰か1人が手をあげて言うと自分も言わなきゃいけないと思う」―。2月3日、JOC (日本オリンピック委員会)臨時評議員会でのいわゆる“女性蔑視発言”が国内外から猛烈に批判された東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)が2月12日、辞任表明に追い込まれた。

遅きに失した観は否めないが、問題をここまでこじらせた一因に4日に開催された森会長の記者会見、組織委の広報対応があったと言えなくもない。“お詫び”で幕引きを図るつもりが、臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんいわく「これほど謝罪する気のない会見をみたのも久方ぶりだが、燃えている炎に「これでもか!」と油をガンガン注ぐような謝罪会見も、昨今ではほとんど見ることがない」(出典:文春オンライン|謝罪する気はあったのか?森喜朗氏の大炎上会見を通してみられた「肯定的幻想」)となってしまった。

確かに20分弱の会見を見る限り、森会長の謝罪の気持ちは全く伝わってこない。冒頭、「昨日、JOC評議委員会での私の発言につきましては、オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であったと認識をしています。深く反省しております。発言いたしました件については撤回したい。不愉快な思いをされた皆さまにはお詫びを申し上げたい」などと、あらかじめ用意されたペーパーを読み上げただけで一度も頭を下げることはなかった。

首相まで務め、今も政界・スポーツ界などに大きな影響力を持つ森会長にとって、孫にも当たるような若い記者たちを前にこうべを垂れるなどできるはずもないのだろう。さりながら、謝罪すべきは記者やテレビカメラの向こうにいる「不愉快な思いをされた皆さま」であって、女性はもとより多くの市民の目があることを忘れてしまっては“謝罪”も所詮うわべだけと映ってしまう。

そんな会見で“火に油を注いだ”のは記者との質疑応答。トップバッターに立った記者の「辞任をしなければならないと考えたことはあったか」の問いに、森会長はやや笑みを浮かべながら「辞任するという考えはありません。私は一生懸命、献身的でお手伝いに7年間やって来たわけですので、自分からどうしようという気持ちはありません。皆さんが邪魔だと言われれば、おっしゃる通り老害が粗大ゴミになったのかもしれませんから、そしたら掃いてもらえればいいんじゃないですか」と開き直りとも取れる言に“反省”は感じられない。

まして「自分からどうしようという気持ちはない」森会長にとって、畳みかけて質問する記者はうるさく、苛立ちは隠せない。「会長をされることが適任か」の問いに「さあ、あなたはどう思いますか」、記者の「私は適任じゃないと思いますが」に「それじゃ、そういう風に承っておきます」とまるで他人事。挙句の果て記者を制して、「そういう話はもう聞きたくない」と不機嫌そうに横を向いたりと、謝罪会見に臨んでいる自らの立場が全く分かっていないのが明らか。極めつけ「面白おかしくしたいから聞いているんだろう」と逆切れするに至っては、岡村さんが書かれている通り「この謝罪会見は悪い例として最適の教材」(出典:前述と同じ)となったと言う他ない。