2026/06/12
危機管理の伴走者たち
トップインタビュー
フクスケ 代表取締役 小林大介氏
Profile 【こばやし・だいすけ】
CARTA HOLDINGS(旧:VOYAGEGROUP)に新卒で入社。学生エンジニアのキャリア支援・就活支援を行う株式会社サポーターズの立ち上げに関わる。採用、HRのプロフェッショナルとしてキャリアを築き、2019年にフクスケを創業。法人の人的資本、採用定着問題から副業事故を防止する。
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。
フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
※本記事は「月刊BCPリーダーズvol.73(2026年5月号)」に掲載されたものです。
――企業が副業を解禁するメリットを教えてください。
本業として所属する企業は、従業員のスキルアップを期待できます。副業を獲得し、継続するためには、自ら考え、主体的に行動することが不可欠です。これまでは会社の命令だけで受動的に働いていた方が、副業をきっかけに本業でも能動的に働くといったプラスの効果を、企業は受け取ることができます。
自律的に副業を始めた従業員は、収入増が見込めます。また、本業先以外でスキルを磨くことで、キャリア形成を社内だけに依存しなくなるのも大きなメリットです。自己実現につながる副業を持つことで、本業での昇格だけに縛られず、社外での挑戦機会を得られます。副業を維持したまま転職を選ばず、本業先に長く在籍しようと考える方も少なくありません。
副業者に仕事を依頼した企業にとっては、副業人材を採用候補者として捉えることもできます。副業として業務を依頼し、成果を確認したうえで採用に至る場合、本人も企業側も業務内容を理解した状態で入社するため、採用後のミスマッチを減らせます。採用手法としては、インターンシップに近い側面があります。
これらの観点から、厚労省は平成30年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しました。国策としても、副業は推奨されている状況です。
――解禁のデメリットは?
まず副業者側のリスクとして、本業以外の場面で個人として責任を問われる機会が増えます。個人事業主として働く場合は、納期遅延や業務未履行、取引先とのトラブルに自ら対応する必要があります。また、副業先と雇用契約を結ぶ場合でも、問題の内容によっては個人責任を問われる場面が生じ得ます。
本業先の企業にとっては、業務時間外で起きるトラブルや事故が増え、潜在的なリスクを把握しにくくなる点がデメリットです。副業の実態が見えにくいため、過重労働により本業へ支障が出る場合もあります。
一方で、社内の過度な懸念にも注意が必要です。副業は収入増や自己実現、スキルアップにつながり、本業先への長期在籍を後押しする側面もあります。しかし、上司や役員、管理者が副業を一律に退職リスクと捉えて過度に懸念し、必要以上に制限すると、かえって従業員との関係が悪化するリスクが指摘されています。重要なのは一律禁止ではなく、競業や情報漏えい、ブランド 毀損、過重労働などのリスクを把握し、制度として運用することです。
――そもそも、企業の副業リスクは何を指すのでしょうか?
まず前提から誤解されがちですが、原則として、企業が従業員の副業を一律禁止することは認められにくいとされています。従業員が業務時間外に副業するのは自由です。それでも、例外的に企業が副業を制限または禁止できるケースがあります。厚生労働省が、過去の裁判例で認められた4つの例外事項を踏襲し、2018年に「モデル就業規則」として定めています。
①労務提供上の支障がある場合、②企業秘密が漏えいする場合、③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合、④競業により、会社の利益を害する場合が該当します。 例えば、適用できる範囲の広い②には、顧客情報の持ち出しや、プログラムなどの情報資産の流用が含まれます。③では、虚偽の申請や闇バイト、反社会勢力とのつながりなどのコンプライアンス問題が当てはまります。
近年、実務上注意が必要になっているのが、副業先の先にいる最終顧客、いわゆるエンドクライアントが十分に確認されないケースです。契約先だけを見ると問題がないように見えても、実際の業務提供先が本業先の競合企業や取引先、利害関係のある企業であれば、競業、利益相反、情報漏えいのリスクが生じ得ます。副業確認では、契約先だけでなく、実際に業務を提供する相手まで確認することが重要です。
政府がこうしたルールを策定する際、プリンシプル型と呼ばれる手法を取ります。副業トラブルは全てをルール化することが難しく、観測自体も困難です。そのため、抽象的で解釈の幅の大きいプリンシプル(原則)を定めて、原則にトラブルを当てはめることで解決しています。
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