「名経営者」として市場の称賛を浴びてきた永守重信氏率いるニデック(旧日本電産)において、長年にわたる組織的な会計不正が明らかになりました。2026年4月17日に公表された第三者調査委員会の最終報告書によると、不正は2011年から始まり、2025年4〜6月期までの累計で純利益へのマイナス影響額は1607億円にのぼります。
本件は、固定資産の減損回避や子会社における売上高の過大計上など、手法自体は古典的な「業績プレッシャー型」の不正です。しかし、リスク管理の観点から看過できない、以下の3つの特異な本質があります。
・ガバナンス体制の外側に、闇の処理担当が存在
・「名経営者バイアス」による内部告発の機能不全
・不誠実なダメージコントロールによる広報の失敗
1.ガバナンス体制の外側に、闇の処理担当が存在
長年の会計不正が隠蔽され続けた最大の要因は、ガバナンスシステムの外側に構築された「特命監査部長A氏」という特殊な存在にあります。
報告書によると、A氏は2011年頃から2020年6月まで、永守氏の特命を直接受けて単独で処理を行っていました。本来、監査で見つかった不正や課題は、経営管理監査部などのしかるべき部門に共有され、組織として実効性のある是正がなされるべきです。しかし、A氏は調査内容をブラックボックス化し、永守氏への報告後はメモさえ回収するという徹底ぶりで「闇の処理」を担っていました。
A氏はすでに退職しており、調査委員会のヒアリングにも応じていないため、詳細な動機や経緯は未解明のままです。だが、象徴的なのはA氏の退任(顧問への降格、報酬40%減額、その後の退職)に伴う、永守氏の次の供述です。
「A氏に代わる人材はおらず、特命監査は終了した。以降、自分宛の投書は、経営管理監査部等に共有するようになった。秘密裏に処 理して、上手くまとめることができなくなったので、投書の数は減った。」、「(ニデック の内部通報制度は)通報先を法律事務所にしているが、それでは大物は見つからない。本当に悪いことをしている者は、そのようなところには通報しない。」
<調査報告書(公表版)p.70より>
これは、大物の不正を見つけるには秘密裏の処理(特命監査)が必要悪だったと自己正当化しているように見受けられます。しかし、結果としては1607億円という最大級の不正を自ら生み出し、隠蔽するシステムになっていました。
「経営トップ直轄の隠蔽システム」は組織そのものを致命的に弱体化させます。正規の内部通報ラインを通らない「特命ルート」の存在自体が、ガバナンスにおける最大の脆弱性となるのです。
<リスクマネジメントジャーナル:日本リスクマネジャー&コンサルタント協会>
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方