組織のレジリエンスとそれに関連する概念との関係(出所)Cristina Ruiz-Martin 他 / What we know and do not know about organizational resilience

本連載では過去に、「レジリエンス」という用語が既存の論文などの中でどのように定義されているのかを調べた結果を2例ご紹介した。1つめは筆者がこれまでにアクセスした範囲内で書いたもの(注1)、もう1つは Sonny S. Patel氏を中心とするグループが「コミュニティのレジリエンス」の定義について系統的文献レビュー(systematic literature review)を行った結果である(注2)。前者のような場当たり的なものには学術的な価値はほとんど無いが、後者のように一定の方法論に基づいて行われた網羅的なレビューには学術論文としての価値が認められることがある。今回ご紹介したいのはそのような系統的な文献レビューの例である。

スペインの Valladolid大学(注3)の Cristina Ruiz-Martin 氏を中心としたグループが 2018 年に発表した論文「What we know and do not know about organizational resilience」(注4)(以下、「本論文」と略記)では、次の2つのリサーチクエスチョンに基づいて、Scopusという論文データベースを中心に 2016年1月までに発表された論文を対象として調査した結果が報告されている。

1) 組織のレベルにおいてレジリエンスはどのように概念化されているのか?
2) 組織のレベルにおいてレジリエンスはどのように評価されているのか?

図1は本論文における調査プロセスである。このプロセスの STEP6までで143の論文が選ばれたが、これらの論文で引用されている論文のうち、ここまでの調査結果に含まれていなかったものについて、レビュー対象に含めるかどうか個別に検討して48の論文を追加した結果、最終的なレビュー対象論文数の合計は191となっている。

写真を拡大 図1. 本論文における調査プロセス(出所)Cristina Ruiz-Martin 他 / What we know and do not know about organizational resilience

ところで前述のリサーチクエスチョンについてであるが、まず概念については、組織のレジリエンスの捉え方が大きく次の3種類に分けられるという。

1) 組織の特性(feature of an organization)
2) 組織の活動の結果(an outcome of the organization's activities)
3) 組織が耐えられる外乱を測る尺度(measure of the disturbances that an organization can tolerate)

また組織のレジリエンスの評価については、評価手法などを提案する論文が30以上あるとのことで、前述の3種類の捉え方に分けて、どのような評価手法が提案されているかが紹介されている。しかしながら評価手法に関するコンセンサスはまだできていないのが現状だという。

本論文ではこのような系統的レビューの結果を踏まえて、組織のレジリエンスについて今後研究を進める上での方向性や留意点などが提案されており、また参考文献リストには149本の論文が掲載されている。組織のレジリエンスに関する研究に取り組む方々にとって利用価値の高い、大変貴重な論文と言えるであろう。

■ 報告書本文の入手先(PDF18ページ/約0.6MB)
https://doi.org/10.4995/ijpme.2018.7898

注1)「世界の研究者は「レジリエンス」をどのように捉えているのか - 様々な論文や書籍におけるレジリエンスの定義」http://www.risktaisaku.com/articles/-/2667

注2)「コミュニティのレジリエンスを我々はどのように捉えるべきか? - コミュニティのレジリエンスに関する系統的文献レビュー」http://www.risktaisaku.com/articles/-/2947

注3)Valladolidは「バジャドリード」もしくは「バリャドリード」と発音する。余談だがサッカー元日本代表FWの城彰二氏がここのクラブチームに所属していたことがある。

注4)Ruiz-Martin, C., López-Paredes, A., Wainer, G. (2018). What we know and do not know about organizational resilience. International Journal of Production Management and Engineering,6(1), 11-28. https://doi.org/10.4995/ijpme.2018.7898

 

(了)