防衛省は18日、全自衛官らを対象に実施したハラスメント実態把握のための「特別防衛監察」の結果を公表した。被害を申告した人の6割超が相談窓口を利用せず、多くが制度への不信感を訴えるなど、既存の防止対策が機能していない実態が浮き彫りになった。
 外部専門家による有識者会議は同日、組織的な問題を指摘した上で、対応の迅速化や外部人材の活用などを提言。防衛省は提言を踏まえ、来年度予算の概算要求に対策を盛り込む方針だ。
 特別防衛監察の結果によると、ハラスメントの被害申告は計1325件。パワハラは77%、セクハラは12%だった。隊員数の多い陸上自衛隊が約6割を占めたが、組織的な偏りはなかった。
 このうち、ハラスメントの担当窓口に相談していたのは400件にすぎず、64.2%の850件は相談制度を利用していなかった。利用しない理由の約4分の1は制度の周知不足が原因だったが、「改善が期待できない」(23%)、「不利益や報復への懸念」(10.7%)、「秘密保持や相談員への不信」(8.7%)など制度への不信感を挙げる回答も目立った。
 相談窓口の利用者からの不満も強かったとし、「制度が役割や機能を果たせていない」と指摘した。個々の事案については聞き取りや面談が進められており、これまでに8件の懲戒処分が行われたとした。
 有識者会議は、監察結果などから「組織の強い一体性から(ハラスメントが)『許される』という誤った認識」「上官と部下の意識のずれ」などの組織的問題があると指摘。申告から3カ月以内の対応▽懲戒処分の内容や処分基準の周知▽当事者と上下関係や利害関係のない調査体制―などが再発防止に必要とした。
 特別防衛監察は、元陸自隊員五ノ井里奈さんの性被害告発を機に、防衛相の指示で実施。昨年9~11月、現役隊員やОBから1414件の回答が寄せられた。 
〔写真説明〕防衛省のハラスメント防止に向けた有識者会議座長の只木誠中央大法学部教授(右)から、提言書を受け取る同省の三貝哲人事教育局長=18日午前、防衛省

(ニュース提供元:時事通信社)