公正取引委員会は21日、ヤフーなど巨大IT企業が運営するニュース配信のポータルサイトやアプリについての実態調査結果を公表した。ニュースの提供元である報道機関に支払う記事使用料が、最も安い事業者と最も高い事業者で約5倍の開きがあることが判明。公取委は、著しく低い設定は独占禁止法で禁じる「優越的地位の乱用」となり得るとの見解を示した。
 公取委は、新聞や雑誌など既存メディアの読者が減少する一方、ニュースサイトの利用者が拡大する中で、公平な競争環境の確保に向けて取引条件の改善を促す。独禁法上問題となる具体的な事例があれば、厳正に対処する。
 調査は、報道機関約200社と消費者2000人からアンケートの回答を得たほか、ニュースサイトを運営するヤフーや米グーグルといったプラットフォーマーなどへの聞き取りも行った。
 記事使用料の水準は、プラットフォーマー6社の2021年度平均がページ閲覧回数1000回当たり124円。最も安い事業者が49円、最も高い事業者が251円30銭と約5倍の開きがあった。
 また、サイトの広告収入の総額から記事使用料の支払いに充てる割合は、1社当たり平均で約24%だった。公取委は、広告収入や使用料の算定方法などを「可能な限り開示することが望ましい」と指摘。事業者の収益への貢献の程度を使用料に「反映することが望ましい」との見解を示した。
 このほか、見やすい位置に見出しが掲載される「主要ニュース」は、選定基準を明示することが望ましいとした。異なる基準を適用し掲載機会を減少させるなど、ニュースの提供元に対して不当に不利益を与える場合は独禁法上問題になるとも指摘した。
 日本新聞協会の中村史郎会長のコメント
 プラットフォーム事業が報道機関の経営に影響を与えていることは、民主主義の根幹を揺るがしかねない世界的な課題になっている。プラットフォーム事業者は報道機関との取引や関係の適正化に向けて誠実に対応するよう求める。 

(ニュース提供元:時事通信社)