第6回 カーボン・オフセットの取り組み状況
国内外の取り組み状況を紹介
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
2024/05/05
環境リスクマネジメントに求められる知識
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
国内のカーボン・オフセットの取り組みは、環境省が2002年度より開始しています。2012年には、「カーボン・オフセット制度」と「カーボン・オフセット第三者認証基準」を創設して、温室効果ガスの排出量削減・吸収量増加を推進するための基盤を確立しました。2017年度からは、民間の「一般社団法人カーボンオフセット協会」が、運営を任されています。第5回に引き続き、国内外のカーボン・オフセットの取り組み状況の一端を紹介いたします。
企業による温室効果ガス削減のためのカーボン・オフセットの状況は、環境省の「2018年度環境にやさしい企業行動調査(最終版)」によりますと、「取り組んでいる」が約20%、「取り組む予定がない」が約38%、「分からない」が約42%の割合でありました。また、カーボン・オフセットに取り組んでいる実施形態(複数回答)をみますと、社員の通勤、業務ビルなどにおける電力使用などの「自らの活動」を対象とする企業が約50%、「商品製造・使用時やサービス利用時」を対象とする企業が約40%、「会議イベント開催」を対象とする企業が約22%を占めていました。さらに、企業が購入するクレジットは、「オフセット・クレジット(J-VER: Japan’s Verified Emissions Reduction)」が約54%と公表されました。
環境省による2015年の「カーボン・オフセットガイドラインVer.1.0」では、「カーボン・オフセット制度」と「カーボン・オフセット宣言」で利用されるクレジットとして、J-クレジット、地域版J-クレジット、オフセット・クレジット(J-VER)、都道府県J-VER、国内クレジットがあります。これらの詳細は、スペースの関係で、別の機会といたします。
ここで、クレジットの利用状況をみますと、2010年から2023年までの14年間のカーボン・オフセットのクレジット無効化・償却量 (J-クレジット、J-VER、国内クレジット)の累計推移は、図表1のとおりであります。
図表1では、無効化・償却されたクレジットが、2010年度に5万トン/ CO2であったものが、2023年度には644万トン/ CO2 (全認証量1150万トン/ CO2のうち)と約130倍に拡大していることがわかります。なお、無効化・償却量の内訳は、スペースの関係で省略いたします。クレジット(排出権)の無効化・償却は、温対法への報告やカーボン・オフセットのために企業や自治体などがクレジットを利用することでありますから、カーボン・オフセットの活動に参加する企業などが増加したことを意味しています。2024年4月時点でのカーボン・オフセットの取り組み件数は、1492件と公表されています。
環境リスクマネジメントに求められる知識の他の記事
おすすめ記事
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/12/05
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方