台湾総統選で勝利した民進党の頼清徳氏は「信念の人」と評される一方、「真っすぐ過ぎて柔軟性がない」(頼氏周辺)とされ、率直な物言いで物議を醸すことが珍しくない。かつて「台湾独立工作者」を自称した対中強硬派で、中国の習近平政権から敵視されている。
 1959年10月、台湾北部の現在の新北市に生まれ、幼くして父を炭鉱事故で亡くした。台湾大学(台北市)などで医学を学び、南部・台南市の病院で内科医を務めた。米ハーバード大で公衆衛生学の修士号も取得した。
 初めて総統選の直接選挙が行われた96年、中国が台湾海峡にミサイルを撃ち込んで威嚇した「台湾海峡危機」を目にして、医師から政界に飛び込むことを決めたという。98年、台南市から立法委員(国会議員)に初当選し、4期務めた。2010年、台南市長に転身。清廉なイメージや実直な政治姿勢で支持を集め、早くから総統ポストを狙える党のリーダー候補と目されてきた。
 蔡英文政権誕生後の17~19年に行政院長(首相)。20年総統選に出馬表明し、再選を目指す蔡氏と候補者争いで激突したが、2期目の蔡政権では副総統として支えた。民進党が22年の統一地方選で大敗した後、党主席(党首)を引責辞任した蔡氏の後任に就いた。親日家として知られ、22年の安倍晋三元首相の葬儀に参列するため、現職副総統としては異例の訪日を果たした。
 家族は妻と息子2人。64歳。 
〔写真説明〕台湾与党・民進党の頼清徳副総統=13日、台南市(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)