2024/03/17
防災・危機管理ニュース
全ての介護施設で4月から、感染症や自然災害に備えた事業継続計画(BCP)の策定が義務となる。8割以上で作成が進む中、いざという時に実効性を持たせることが重要だ。専門家は大規模災害に備え「日頃から地域と福祉がつながることが課題だ」と指摘する。
厚生労働省は、被災時の介護事業者の役割として▽サービスの継続▽職員・利用者の安全確保▽地域への貢献―を列挙。跡見学園女子大学の鍵屋一教授は「福祉のBCPは命と尊厳と暮らしがかかっており、より重要性が高い」と語る。
しかし、作って終わりではない。厚労省は自然災害のBCPガイドラインで、地域の人々と共同で防災訓練に取り組むことが望ましいとしているが、同省が昨年1万事業者に行った調査(有効回答率52%)では、約半数の施設が訓練に「地域住民の参加を求めておらず、参加はない」と回答。「必要性を感じない」との意見もあり、必ずしも浸透していない。
鍵屋氏は「実効性を伴うにはシミュレーションや訓練で課題を発見し、対策を考えるプロセスを繰り返す」作業が必要と説く。
BCPは自治体のハザードマップや被害想定を踏まえて事業者が作る。しかし能登半島地震が起きた石川県では、地震被害の想定を1995~97年の調査から更新しておらず、同半島北方沖で想定される地震は「ごく局所的な災害で、災害度は低い」との評価にとどまっていた。
震度6強を観測した穴水町の地域密着型サービスの施設管理者はBCPを作っていたものの「ここまで大きな被害は想定していなかった」と話す。建物の損壊は小さかったが、地中の水道管が壊れ、断水が長期化。排せつや入浴のケアを十分行えず、入所者は全員金沢市などに避難した。
想定が甘いと対策の緩みにつながりかねず、鍵屋氏は「科学的に根拠のある被害想定を作るのは行政の大きな責務だ」として、今回の地震を機に、各地で最新の知見に基づいて被害想定が見直されることを期待する。
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方