2025/02/19
阪神・淡路大震災30年の光と影
阪神・淡路大震災30年

1月17日の正午すぎ、西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
「義理の父が家族を守ってくれた」というのは、桐山ひとみさん。住宅の1階が崩れて亡くなった。隣で寝ていた義理の母と2階に住んでいた夫と自分、そして2人の娘は無事だった。自分にも子供にも優しかった義父に何気なく言った言葉に、今も心残りがあるという。「年とって病院に入っても、ちゃんと世話するねと伝えたんです。すると『あなたに迷惑をかけないように亡くなるからね』と言われました。その時は何気なく、人間はすぐに亡くならないよと返したんです」と言葉を詰まらせる。
「30年という時の流れにびっくりする」と話すのは別所順平さん。学生時代に住んでいたアパートは震災で潰れ、同じアパートに住んでいた友人を亡くした。「助けられなかった」と打ち明ける。現在は京都に住み、可能な限り1月17日に現地に足を運んでいるという。阪神・淡路大震災を振り返り「想定外と言ったら終わり。想定内をどこまで広げられるか」と話す。

毎年、来ているという森田幸子さんは「昨日のことのようにはっきりと覚えています」と語る。当時、西宮市内に兄弟3人、別々の場所で暮らしていた。地震で崩れた屋根が原因で、弟を亡くした。小学校の体育館で横たわる姿を見て、大泣きした。人づてに、息を引き取った後に来た医師は手当ができないことを謝りながら、その場を去ったと聞いた。30年経っても気持ちは何も変わらない。「当時の事は忘れられません」と話す。
栃木県に住む福永政幸さんは、30年ぶりに西宮市を訪れた。震災の翌日に新幹線と在来線を乗り継ぎ、徒歩で義理の両親が住む西宮市にたどり着いた。「2階建ての大きく立派な家で、上を非常に太い梁が走っていた。その梁が落ちて下敷きになり義理の両親、2人を亡くしました。今の私よりだいぶ若く、50代だった。非常に残念でした」と話す。災害は避けられない。「国としてうまく対応できる仕組みをつくってほしい」と願いを語った。
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