2025/02/06
現地発
埼玉・八潮 道路陥没

2月5日、発生から8日目を迎えた埼玉県八潮市の陥没現場周辺は、先端を破砕用に付け替えたショベルカーからのごう音が響いていた。近隣の細い水路では作業員が水に浸かり、ホースが通す作業を行う。陥没地点から南東方向に広がる、金属や機械工業などの工場エリアで被害を聞いた。

「1月28日から電話、FAX、インターネット回線が全て不通になった。会社の電話が全くつながらないと、お客から連絡が(携帯電話に)入った」と話すのは、早潮金属社長の関考治さんだ。顧客との連絡は、携帯電話で全て対応。回線が復旧したのは2月1日朝、陥没発生から4日後のことだった。
最大の被害は、炉の燃料である都市ガスの停止だった。同社は鋼材のロールを薄く伸ばし、顧客の求める厚さと硬さの帯鋼を製造。帯鋼は自動車部品の製造などに用いられている。炉による加熱は不回避な工程で、同社の技術力が集約される場でもある。

都市ガスの停止から1、2日後に復旧の目処を問い合わせたところ、不明との回答だった。事業継続のため、その段階でプロパンガスへの切り替えを決断した。プロパンガス業者に依頼し、2月4日に設備工事は完了した。しかし、炉を加熱するプロパンガス用のバーナーの納品には1カ月が必要だった。
幸いにも、都市ガスは陥没発生から3日後の1月31日に復旧。炉は、2月4日に都市ガスでの加熱を再開させた。「3日ほどで都市ガスが回復しなかったら、お客に大迷惑がかった。うちにしかできない仕事がある」と関さんは語る。
一週間、炉が使えなかった事業への影響は限定的。都市ガスが停止したのは、炉に入っていた帯鋼が冷却中のタイミングで、熱を加えていなかったのも幸運だった。加熱中にガスが停止すると全てが台無しになった。お客への納品に影響はないという。しかし、プロパンガスへの切り替え対応に300万円ほどを費やした。
同社が想定する最大のリスクは停電だ。機械や設備の全てがストップする。しかし、年間の売上げが17、8億円ほどの同社にとって、強固な対策を実施することは難しい。「停電の場合は、お客さんに謝るしかない」と話す。
陥没した場所は関さんの通勤経路でもあった。「早い時間に発生していたら巻き込まれたかもしれない」と明かした。
現地発の他の記事
- 阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
- 陥没事故で感じた防災・BCPの重要性
- 埼玉・八潮 道路陥没影響は固定電話の不通から
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方