土木学会は11日、南海トラフ巨大地震・津波が発生した際の経済的な被害は、復興までの約22年間で最大1466兆円に上ると発表した。政府が3月末に公表した新たな被害想定で建物や工場などの「資産被害」が225兆円とされたが、これとは別に、生産施設や道路、港湾の損壊で経済活動が長期低迷することによる「経済被害」を1241兆円と独自に推計した。
 約22年という復興期間は、東日本大震災をモデルとして想定した。土木学会は2018年には、政府が13年に公表した被害想定に基づく資産被害が170兆円で、復興まで20年間の経済被害を1240兆円と推計し、合計1410兆円と発表している。この際の復興期間は阪神大震災をモデルにしていた。
 長期的な経済被害の推計が微増にとどまったのは、復興モデルの変更や物価上昇の一方、過去約7年間で地震・津波対策がある程度進んだと評価したため。道路や港湾、堤防、建物の公共インフラ対策に58兆円強支出すれば、経済被害は3割(396兆円)減るという。
 この推計の報告書をまとめた藤井聡・小委員長(京都大教授)は記者会見で、「特に道路ネットワークの強靱(きょうじん)化が復興に影響する。能登半島地震の後、石川県珠洲市の復興が七尾市より遅いのは道路がつながっていなかったからだ」と話した。 
〔写真説明〕南海トラフ巨大地震・津波の長期的な被害推計について記者会見する土木学会の藤井聡・小委員長(京都大教授)=11日午前、東京都新宿区

(ニュース提供元:時事通信社)