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7月30日午前8時25分頃、カムチャツカ半島沖でマグニチュード8.7の地震が発生し、日本の気象庁は北海道から和歌山までの太平洋沿岸に津波警報を発表した。予想される津波の高さは最大3メートルとされ、高台や避難ビルなどへの避難が広く呼びかけられている(30日11時30分現在)。地震による日本本土への直接的被害は確認されていないが、津波が到達、あるいは今後到達が懸念される沿岸部では多くの住民が一斉に避難している。

この避難行動において新たに発生するリスクが「熱中症」である。30日は全国的に気温が35度近くまで上昇しており、日差しの強い高台や屋外避難場所で長時間滞在することで、熱中症の発症リスクが極めて高まる。特に乳幼児、高齢者、持病のある人は重症化しやすく、意識障害や嘔吐、けいれんなどの症状が出た場合には中等症以上と判断される。

総務省消防庁では、このような症状が確認された際は、「津波警報の発令中であっても」迷わず119番通報を行ってほしいとしている。

救急搬送では、災害時や警報発令中でも人命最優先で対応される体制が整備されている。重症者の搬送はためらわずに要請することが重要だ。

一方、避難先では、住所が不明、渋滞、さらには救急車両がどこまで来られるのかなどがあいまいなど、さまざまな障壁が考えられる。避難場所ごと、緊急時に、誰が、どこまで、どのように患者を救急隊に引き渡すのか、など、あらかじめ話し合っておくことが求められる。

さらに、津波警報中で救急搬送を行うには、救急隊側にも津波によるリスクが生じることを十分考慮し、まずは熱中症にならないように対策をすることが最重要になる。

熱中症対策としては、まず水分を少量ずつこまめに摂取することが重要である。加えて、首元や脇の下など体表近くを流れる血管部位を冷却することで、体温の上昇を抑制できる。帽子やタオルで直射日光を遮断し、風通しの良い日陰に移動することも基本的な対策である。

意識がはっきりしない、応答が鈍いといった場合は、体調回復を待つのではなく直ちに救急要請を行う。救急隊に対しては、現在地(避難場所)と症状を簡潔に伝えることが求められる。