2025/10/13
インタビュー
トヨタ流「災害対応の要諦」
被災地での初動支援や現場での調整、そして事業継続――。トヨタ自動車シニアフェローの朝倉正司氏は、1995年の阪神・淡路大震災から、2007年の新潟県中越沖地震、2011年のタイ洪水、2016年熊本地震、2024年能登半島地震など、国内外の数々の災害現場において、その復旧活動を牽引してきた。常に心掛けてきたのはどのようなことか、課題になったことは何か、来る大規模な災害にどう備えればいいのか、朝倉氏に聞いた。
Q. 入社以来、どのような災害に、どう対応されてきましたか?
細かな事故や災害などを含めれば数えきれません。最初に大きく関わったのは1995年の阪神・淡路大震災でした。当時は「災害対応」という言葉自体、社会では一般的ではありませんでしたし、あんな場所であんなことが起きるとは誰もが想像できていませんでした。
私は1984年に大学院を修了して入社し、生産技術に8年ほど携わった後、1993~1995年に生産調査 部に在籍していました。当時、生産 調査部の事務所は、豊田市の事務3号館という場所にありました。私は豊田市生まれ・豊田市育ちで、家も会社からすぐ近くだったので、家から通っていましたが、会社に来たら「神戸が大変なことになっているから、現場に行ってくれ」と。
私は大阪大学出身で地の利があったこともあり、最初は運転手のような役回りで行くことになりました。それが私の現場デビューです。
その後、新潟県中越沖地震における部品メーカー工場被災や、東日本大震災における関係会社 の被災、熊本地震、そして2024年の能登半島地震など、思い出しはじめたら枚挙に暇がありませんが、やはり、トヨタの生産が止まりそうだと感じた事案が強く記憶に残っています。国内ではあまり知られていませんが、2011年のタイ洪水や、2022年のアフリカでの洪水など、海外での災害支援にも入りました。
Q. 災害対応の中心を担うようになったのは、いつからでしょうか?
神戸の震災に行ったときに、「朝倉は使える」と思っていただけたのだと思います。そこから災害のたびに声がかかるようになりました。
当時、「トヨタ・セルシオ」のカーナビを標準装備するため、神戸市にあった部品メーカーの供給再開が重要でした。その会社も被災をしましたが、下請けでカーナビのフレームをプレスしていた神戸市東灘区御影の会社でプレス機が倒壊し、それを立て直さないとナビを供給できない、つまりクルマが作れない。そこで復旧に張り付きました。
インタビューの他の記事
- 入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
- 第二次トランプ政権 未曽有の分断の実像
- 「防災といえば応用地質」。リスクを可視化し災害に強い社会に貢献
- 走行データの活用で社用車をより安全に効率よく
- トヨタ流「災害対応の要諦」いつ、どこに、どのくらいの量を届ける―原単位の考え方が災害時に求められる
おすすめ記事
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-
-
-
第二次トランプ政権 未曽有の分断の実像
第二次トランプ政権がスタートして早や10カ月。「アメリカ・ファースト」を掲げ、国益最重視の政策を次々に打ち出す動きに世界中が困惑しています。折しも先月はトランプ氏が6年ぶりに来日し、高市新総理との首脳会談に注目が集まったところ。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に、第二次トランプ政権のこれまでと今後を聞きました。
2025/11/05
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/11/05
-
-
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方