2015/05/29
防災・危機管理ニュース
14年2月中旬ごろから、安倍政権による河野談話見直しの動きに経営陣が危機感を抱き、本格的な検証を行わざるを得ないとの考えが強まった。3月下旬に社内に検証チームを設置。14年中に記事化する方針を固めた。当初は政府による河野談話検証結果発表の後に、6月ごろに記事にする予定だったが、サッカー・ワールドカップの開催時期を避けたりした結果、最終的に8月上旬に落ち着いた。これに関連して、経営幹部はこの検証は危機管理に属する案件であるとして、経営幹部がその内容に関与することとしたという。
14年8月当時ゼネラルマネジャー(GM)兼東京本社報道局長だった市川速水氏は、なぜ8月に記事を取り消したのかについて、「抵抗の拠点から 朝日新聞『慰安婦報道』の核心」(青木理著、講談社)のインタビューの中で、安倍政権による河野談話の検証結果が6月20日に公表されたこと、15年が戦後70年、日韓国交正常化50年に当たり、慰安婦問題が日韓関係などのトゲになっていることを踏まえ、ここで朝日新聞のよって立つところを整理・確認して次の段階に進もうとの意図があったと説明。元主筆の若宮啓文氏も同書の中で「吉田証言について遅まきながら明確に取り消し、身ぎれいになった上で言論戦を挑もうという気持ちだったのでしょう」と推測している。
これに対し、朝日新聞関係者は木村氏が社長時代に、NHK番組改変問題で同紙と対立していた安倍晋三首相と数回会っていると指摘した上で、「今回の(誤報取り消しの)背景には、安倍政権へのすり寄りの問題があるのではないか。安倍政権が長期政権になると思ったのではないか」との見方を示している。いずれにせよ、河野談話の検証などの安倍政権の動きが影響を与えたのは確かだと言えよう。

◇進退問題への波及恐れ、謝罪を削除
最大のポイントは、誤報を認めながらなぜ謝罪しなかったのかという点だ。報告書は、吉田証言の裏付けは取れず虚偽性をうかがわせる資料も確認できたことから、現場の検証チームは訂正しておわびする方針で固まり、7月15日までに紙面案を作成したが、16日の協議で木村社長が反対したため、おわびは削除して「反省」を表明するにとどめたとの経緯を明らかにしている。朝日新聞によると、木村社長は反対した際、「経営に重大な影響を及ぼす可能性がある」ことを理由に挙げたという。
- keyword
- 不祥事・風評・広報
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方