「持続可能な」「維持できる」を意味する「サステナブル(Sustainable)」といった概念が国際議論の場で取り扱われてきて久しい。企業も持続的成長を目指してサステナブル経営に取り組んで一定の時間が経過した。
企業にとって、かつて持続可能性という概念は、利益追求や財務パフォーマンスに関わりのある持続的競争優位という戦略論の概念と結びつけられて論じられることが多かった。すなわち、業界平均より高い収益性を実現し、存続、繁栄を続けてゆくことができれば、利益追求を通じて会社の持続可能性は満たされるというものである。企業の持続可能性の概念が主として活動してきた経済領域における存続、成長の目線で論じられていたという特徴がある。
しかし、国連の論議では、地球的次元における危機感の中から、社会の持続可能性に関わる価値観が大きく変化しつつある。例えば、ガイア論*1)に基づき地球の自己調節機能に関連してレジリエンスの視点から、地球システムの限界(Planetary boundaries)の問題が提起されている。現実に地球環境においては、気候変動の進行や生物多様性の喪失など環境劣化が急速な勢いで進んでいる。また、グローバリゼーションによる経済発展の恩恵が等しく分配されていないことから国家間や各国内の格差が拡大し、さまざまな社会問題が発生している。そのことも関係し、国家間の意見対立や大国の覇権争いが強まり、安全保障や経済安全保障上の不安が高まっている。
これらの企業を取り巻く外的環境の大きな変化は、今まで企業が経験してきた環境前提を変化させ、過去・現在において構築してきた枠組みの機能発揮を変質させ、不確実性の構造を変えようとしている。
企業が収益性を向上させるために取り組んできたさまざまな効率化の取り組み、例えば製造工程や物流の効率化は、プロセスにおける無駄を省くことによってコストを削減し短期的な利益を向上させてきた。しかしながら、中長期的な視点から持続的成長について改めて検証すると、効率化の陰で中長期的なレジリエンスを低下させることとなっている。平時には意識しない事態であっても、中長期的視点で評価すると、大きなリスクを抱え事業継続を危うくする可能性が拡大しているとするなら、効率性の追求とレジリエンスの強化の間に存在するトレードオフに関心を払わなければならない。この関係は、図表-1のとおり整理される。
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