2016/08/01
事例から学ぶ
「リスク対策.com」VOL.56 2016年7月掲載記事
イオングループは、熊本県内に総合スーパー(GMS)7店、スーパーマーケット21店、ホームセンター2店、ワイドマート2店、イオンバイク3店を持つ。このうち県下最大のショッピングセンター「イオンモール熊本」内にあるイオン熊本店では、地震発生時、店舗は営業中で、商品が倒れるなどの被害が出たが、店長が中心となり顧客の安全確認と駐車場への避難誘導を行い、余震で帰れない顧客のために駐車場を開放するなどの対応をとった。地震発生後に店に駆けつけたイオン九州中九州事業部長の野上尚良氏は「落ちてきた物が肩に当たったというお客様が1人出ただけで、他にお客様にケガはありませんでした」と当時の状況を説明する。
一方、千葉市美浜区にある本社では、地震発生30分後には副社長をトップとするグループ全体の対策本部を立ち上げ、ほぼ同時に福岡市にあるイオン九州など九州のグループ会社3社が現地対策本部を立ち上げ、安否確認や被害状況の確認を進めた。テレビ会議を通じて状況はリアルタイムで共有された。
対象エリアに安否確認
イオングループでは、2011年の東日本大震災以降、全グループの社員、パートタイム、アルバイトなどを含む40万人以上が登録できる安否確認システムを独自に開発し、その運用方法について研究・訓練を積み重ねてきた。震度を基準にした安否確認メールの自動配信方式では、地震以外の災害や、今回の熊本地震のように余震が多いケースでは柔軟に対応できないことも考慮し、あくまで対策本部が対象エリアやタイミングを決定した上で、配信を実行することにしている。14日の前震では、対策本部が立ち上がってから約20分後に熊本と長崎を対象エリアに安否確認メールを配信することを本部・現地の対策本部間で決定し、同地域で働く約5500人に対して配信し、安否確認を行った。
イオン熊本店を含む県内の店舗には、大きな被害はなかったが、フェイスブックやツイッターなどのSNSで「イオンモール熊本が火災で燃えている」というデマが流れた。当時、イオン九州本社内の現地対策本部で情報収集にあたっていたイオン九州社長室長の金内繁幸氏は、「一瞬焦りはしたが、店舗はすぐに『そのような事実はない』という確認がとれ、冷静に対応が進められた」と振り返る。
ただし店内では、陳列棚が倒れたり、一部商品が崩れ落ちるなどの被害が出ていたため、イオン熊本店では、翌日は店を閉め、屋外の駐車場で食料品などの商品を中心に販売を継続させた。
そして、16日未明に本震となる揺れが再び熊本を襲った。市内全域が停電になる中、店長と野上氏はイオン熊本店に駆けつけた。「暗くて状況が確認できなかったが天井が落下し、スプリンクラーの配管が折れて床は水浸しになっていた」と野上氏。14日の前震とは比べものにならないほどの被害が出ていることは明らかだった。
千葉市の本社、福岡のイオン九州でも、再び夜中にもかかわらず対策本部要員が集まり、安否確認、被害状況の把握にあたった。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/25
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方