2016/06/15
誌面情報 vol55
これらの対応を速やかにするには、サイバー攻撃がもたらす被害をあらかじめ検証して対応を考え訓練・演習を積んでおくとともに、サイバーセキュリティの状態を常時監視し、サイバー攻撃を検知した際には、経営や企業ブランドに及ぼす影響などを考慮しながら、システムの継続・復旧の判断ができる体制が求められる。
日常的にシステムを監視し、大規模なセキュリティに関わる事件・事故が起きた際に早急な原因究明や影響範囲の特定を行うのがCSIRT(Computer Security Incident Response Team、インシデント対応専門チーム)だ。IT部門と経営との間に立って事業に及ぼす影響や可能な対策を助言する役割も持つ。
サイバー攻撃の場合、専門性が高い技術部隊と、経営、各事業部との連携がより重要になる。自然災害やサイバー攻撃など幅広いリスクを対象に企業の演習を支援するニュートン・コンサルティングのCISO兼プリンシパルコンサルタントの内海良氏は、「サイバーセキュリティは今や重要な経営課題の1つ。CSIRTの役割を検証し、対応力を高める演習が必要」と指摘する。
例えば、CSIRTから経営層にエスカレーションするかしないかの判断が明確に行えるか、経営視点に立った報告ができるか、など。経営層は、CSIRTからの報告を受け、適切に判断・意思決定ができるか、あるいは各部署で社内外からの情報収集・共有が迅速に行えるかも検証すべき項目とする。
一方、IT-BCPで見落としてはいけない点について富士通エフサスの小友氏は、自然災害でもサイバー攻撃でもいずれの脅威についても、最も重要なことは、
①自社の状況を取引先や顧客に正しく発信できるようメールサーバやホームページのウェブサーバについては最低限、代替できる方法を考えておくこと
②支払いのシステムは社会的責任が問われることからシステムが使えなくなった際の代替方法を考えておくこと
③自社の主要事業において重要業務を支えている情報システムは明確にしておくこと
の3点だと説く。さらに、事故や災害、サイバー攻撃事案が起きた際、誰が何をどのような手順で行うのかといったマニュアルを整備していない企業が多いことから、初動体制の構築を急ぐべきだとする。
(了)
誌面情報 vol55の他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/26
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方