2016/06/15
誌面情報 vol55
そもそもBCPの出発点はIT対策だった。ITBCPの構築支援を手掛ける富士通エフサスシニアBCアドバイザーの小友修氏によると、1960年代にデータ・リカバリー・プランと呼ばれていたものがBCPの前身にあたる。データ・リカバリー・プランは、主に物理的な災害や事故から重要なデータを守るファシリティマネジメントと、費用的な手当てをする保険の2つの考え方から成り立っていた。
1970年代から80年代には、より災害にフォーカスをしてディザスター・リカバリープランと呼ばれるようになった。この頃になると緊急対応(エマージェンシー・レスポンス)や、被害後の対応となるCP(コンテンジェンシー・プラン)、ビジネス・リカバリー・プランが含まれた概念になり、1990年代から、この考え方を情報システムだけでなく、広く組織全般に当てはめて「重要な事業を重点的に守る」考え方に発展し、BCPと呼ばれるようになった。
欧米では2001年9月11日の米国同時多発テロで、金融系の企業がBCPを発動し、被災した世界貿易センターから代替オフィスに移動して事業を継続したことで大きな脚光を集め、BCPへの取り組みは大企業を中心に一気に加速した。
一方、国内は、内閣府や経済産業省が中心となり、地震対策としてBCPを推進。そのような中で、IT-BCPの概念は、災害に対して重要な情報システムを継続または早期復旧させるための準備態勢として使われるようになり、サイバー攻撃など情報セキュリティの問題とは、必ずしも一体的な議論がされてこなかった。
誌面情報 vol55の他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方