クリビングに使用する部材の大きさや高さに合わせて重量物を持ち上げ、部材を挿入するスペースができたら直ちに挿入する。一度に高く持ち上げようとするのではなく、少しずつ慎重に持ち上げることが重要。決して持ち上げた部材を被災者の上に落としてはならない。重量物の落下は、速度がつくために被災者の状況を救助の前より悪化させてしまう可能性が高い。一般的には2×4や4×4の角材を井桁に組んでいくが、大規模災害下においては機材の入手が困難な場合も考慮しなければならない。米松の場合であるが、2×4や4×4材で組んだ井桁の重なり合った部分の強度は約3tとなる。

■救出方法

重量物の荷重をてこからクリビングへ載せ変え、安定が確認できたら要救助者を救出するのだが、その際に要救助者の体の一部でも重量物やクリビングに接触させてはならない。また、要救助者を引き出すスペースを安全にするため、救助者のつまずき等を防止するために、事前に活動スペースや退出路の瓦礫等を除去することも重要である。現場指揮官は要救助者の状態、救助者のマンパワー、周辺の環境、に応じた救出方法を決定し実施する。なお、非開放性頭部損傷や脊椎損傷の疑いのある要救助者の救出・搬送には細心の注意を払うこと(第6章災害救護(2)参照)。

■まとめ 
ここでは市民レベルによる捜索救助活動について解説したが、まず第一に重要なことは救助者の安全を最優先事項に考えなければならないということである。2次災害で一般市民が犠牲になることは絶対にあってはならないことだ。そのためにはいかに市民レベルといえども最低限のルールを遵守し、正しいサイズアップ(活動判断)を実行し、引き際を理解した活動を実施しなければならない。そして、いざ捜索救助活動を実施する際は「第3章災害心理学、勇気の心と寄り添う心」の中でも触れたように、要救助者の心に寄り添った活動が実施されることを切に願うものである。 

次号は危険物/テロ災害対応について解説する。

参考文献:
・COMMUNITY EMERGENCY RESPONSE TEAM. Basic Training Instructor Guide.FEMA.DHS
・消防業務エッセンシャルズ第6改訂版日本語版

(了)