長崎大学熱帯医学研究所 山本太郎教授

終息の気配が見えない新型コロナウイルス。外出や移動の自粛、店舗の休業で街の姿は一変、人の行動や価値観の変化は今後の社会のあり方にも影響を与えそうだ。人類は過去に幾度も感染症の脅威にさらされてきたが、パンデミックのような破局的な出来事は、そのたびに大きな社会変革のきっかけになってきた。いま何が起きているのか、歴史から学べることは何か。開発途上国で感染症対策に従事し、人間とウイルスの「共生」を説く長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授に聞いた。(本文の内容は4月8日取材時点の情報にもとづいています)

対策の目的は流行の速度を遅らせること

――新型コロナウイルスはどう終息するのですか。
一つは有効なワクチンができる。もう一つは何回か流行の波が来て6割~7割の方が感染し、集団免疫を獲得する。そうでなければ、最終的な意味での「終息」には至らないでしょう。

――その間に感染した人の治療はどうなりますか。
一般論ですが、治療がどうなるかは医療資源と感染者数の関係で決まると思います。すべての感染者を病院で治療できるならそれでもいいですが、医療資源が不足してきたら、重症者から先に診ざるを得ません。軽症や無症状の人は自宅療養にならざるを得ないでしょう。

――当面感染が続くのであれば、外出や移動の自粛、店舗の休業といった対策にどんな意味があるのでしょうか。
ウイルスを撲滅できる局面は超えてしまいましたが、流行のスピードを遅らせることはできる。それは極めて重要なことです。

一つは、医療崩壊を防ぎワクチン開発までの時間を稼ぐ。短期間で大量の患者が発生すると医療資源が一気に不足し、重症者さえ診られなくなってしまいますが、流行の速度が遅ければキャパシティーの範囲内で対応できます。感染が拡大しているいまは、まず罹らないことが重要です。

もう一つは、ウイルスの弱毒化。流行の速度が速いというのは、次々に宿主が見つかる状態ですから、それだけ強毒のウイルスが選択される可能性も高い。しかし流行の速度が遅いと、ウイルスは宿主を大切にしないと生き残れません。それが反強毒化への淘汰圧になります。

――強毒化ということでは、100年前に世界で死者5000万人~1億人を出したといわれる「スペイン風邪」の場合、第一波より第二波の致死率が高かったと聞きます。今回の新型コロナウイルスも強毒化のおそれがありますか。
わかりません。スペイン風邪は流行初期に第一次世界大戦が勃発、兵士や物資が欧州だけでなく植民地からも動員され、前線では密集が起きました。こうした体制が第一波の流行速度を速め、それが強毒性ウイルスの選択圧として働き、第二波の致死率を高めた可能性が高い。

では、今回の新型コロナウイルスはどうなるかというと、スペイン風邪のときとは状況が違います。ただし、どうなるかは本当の意味ではわかりません。

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