この夏は危険な暴風雨が各地を襲ったが、ビジネス界でもデジタル暴風雨が吹き荒れている(イメージ:写真AC)

デジタル経営改革に吹き込む暴風雨

命の危険に関わる暴風雨という言葉を何度聞いたことでしょう。この夏は。

テレビや有線放送で流れる警戒のメッセージに背中を押され、どうにか間に合って決断した方も多い年でした。年々、災害に備えて平時の準備を進めている家庭や地方自治体も増えているようですから、人々の生活において、実害の範囲や深刻度は全体的には縮小に向かうものと期待されます。

他方、ビジネス界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)や物流改革、さらにはAI投資によって経営のアキレス腱が鍛えられ、事業展開のスピードや収益性が上がる企業も少なくありません。ところが、そこに強烈なデジタル暴風雨が襲いかかり、猛烈な力が加わってアキレス腱が断裂してしまい、文字通り歩行困難となる組織も散見されるようになりました。

とばっちりを受ける企業も出ています。「全治〇週間」という診断をもらえればまだしも、復旧の見通しが立たないという報道も増えており、社内関係者、なかんずく経営陣の焦燥感や孤立感は相当なものであろうと推察いたします。

「押っ取りスマホ」で当座を凌げないか

そういう心理状態のままでは、経営のリーダーもサイバーセキュリティ責任者もリスク管理チームも委縮してしまって、決断に気後れしてしまいかねません。何か前に進む勇気を与えてくれるようなアイデアはないモノだろうかと頭をひねったのが今回のブログです。

ひと昔前、すわ一大事というときに刀を取ることを、押っ取り刀と言ったわけですが、何もないよりもマシです。テクノロジーの進んだ現代ですから、このスマホが使えないか?と、1日スマホを手にあれこれ考えてみました。もちろん、吹き荒れるデジタル暴風雨を写すという発想は願い下げです。

スマホのレンズから発想を飛ばし、3つの視点でデジタル暴風雨を乗り切る方策を考える(イメージ:写真AC)

スマホにはレンズが3つある!

スマホにはカメラのレンズが付いていることが当たり前になっています。特に最近では、3つもレンズが付いています。おや、なぜだろう?自分のは2つだけど?とAIに聞きますと、「広角」「望遠」「超広角」といった複数の異なる画角を持つレンズを搭載し、撮影の幅を広げるために3つ付いている、と立ちどころの回答でした。あ、そういうことですね!

レンズ3つと聞くと、セキュリティに慣れ親しんだ我々はすぐPPTレンズということを連想します。つまり、ヒト(People)、業務(Process)、技術(Technology)の3つのレンズを通してセキュリティ対策のバランスや総合性を評価するわけです。もちろん、経営の効率性を見つめる視点でもあります。

経営リスクのPPTレンズ

この3つの視点を使って、デジタル暴風雨に曝されている経営状態を何とか脱して前に進める方策を考えてみることにします。

このPPTというのは、順番が大切です。サイバーセキュリティ対策担当者の視点からは、どうしても技術(T)のリスクを最初に説明したくなります。特にランサムウェア攻撃の渦中などにあれば、何が暗号化されたとか、このシステムが動かなくなったとか、このバグが突かれたとかいった説明を縷縷(るる)しがちです。経営者は馬耳東風か、心が荒れ狂うばかりとなるでしょう。