以上のデータを使って算出されたリスク指数は、図2のように地図上で色分けされて表示されている。図2は全ての自然現象を対象として計算されたリスク指数を表示した状態だが、画面左上にある「Risk Index」というボタンの右側にあるプルダウンメニューで、特定の自然現象に関するリスク指数を選択して表示することもできる。

画像を拡大 図2. リスク指数の表示例(出典:FEMA / The National Risk Index ウェブサイト)

また、同じく画面左上に並んでいるボタンをクリックすることで、各地域ごとの予想年間損失、社会の脆弱性、コミュニティーのレジリエンスを表示することもできる。予想年間損失についても、ボタンの右側にあるプルダウンメニューで特定の自然現象だけを選んで表示できる。

さらに、詳しく知りたい郡を地図上でクリックすると、その郡におけるデータがクローズアップして表示される。図3はカリフォルニア州サンフランシスコ郡のデータを表示させた例である。図では総合的なスコアのみが表示されているが、右側のウインドウの中で下の方にスクロールしていくと、自然現象ごとのスコアが表示されている。また右上にある「Risk Index」と書かれているプルダウンメニューをクリックして、予想年間損失、社会の脆弱性、コミュニティーのレジリエンスに切り替えることもできる。

画像を拡大 図3. サンフランシスコ郡のリスク指数(出典:FEMA / The National Risk Index ウェブサイト)

なお、郡を選択した状態で右下の「Create Report」という部分をクリックすると、その郡におけるリスク指数、予想年間損失、社会の脆弱性、コミュニティーのレジリエンスに関する情報を全て含むレポートが作成される。また、複数の郡を選択して比較レポートを作ることもできる(最大20カ所)。

ちなみに、リスク指数の算出手法に関しては、411ページにわたる詳細な技術文書が公開されている(注3)。内容も情報量も全く筆者の手に負えない代物であるが、このような技術文書が公開されるのは、研究者の方々にとって有用なのではないかと思う。

FEMAとしては、地域コミュニティーにおける災害対策に役立ててもらうことを意図して、このようなデータを公開しているが(注4)、コミュニティーに限らずさまざまな活用方法が考えられる。

米国内に複数の事業所がある企業にとっては、各事業所における災害リスクを把握するのにも役立つし、米国内に多数のサプライヤーがある場合には、サプライチェーンのリスクアセスメントにも便利であろう。もしかしたら損害保険料の算出や不動産価格にも影響を与えるかもしれない(筆者の勝手な推測であり、根拠は全くない)。

せっかく税金を使ってこのようなアプリケーションが整備され(注5)、災害リスクに関する情報にアクセスしやすくなっているのであるから、地域コミュニティーや民間企業などがこれらをうまく活用して、今後起こり得る災害への備えが進められることを期待したい。

注1)社会の脆弱性についてはSocial Vulnerability Indexとして、次のURLで説明されている。
https://artsandsciences.sc.edu/geog/hvri/sovi%C2%AE-0

またコミュニティーのレジリエンスについては、Baseline Resilience Indicators for Communities として、次のURLで説明されている。
https://artsandsciences.sc.edu/geog/hvri/bric

注2)「Winter weather」については次のように説明されている。
Winter Weather consists of winter storm events in which the main types of precipitation are snow, sleet, or freezing rain.

注3)技術文書は下記URLからダウンロードできる。
https://www.fema.gov/sites/default/files/documents/fema_national-risk-index_technical-documentation.pdf

注4)下記URLの「How to Use the National Risk Index」という部分にそのような趣旨の記述がある。
https://www.fema.gov/flood-maps/products-tools/national-risk-index

注5)前述のサウスカロライナ大学の研究も政府からの助成を受けている。