2023/04/03
Joint Seminar減災・レジリエンス研究教育推進コンソーシアム 第3回共同シンポジウム
災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の紹介
国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長の林春男氏と、関西大学社会安全センターセンター長の河田惠昭氏が代表を務める防災研究会「Joint Seminar減災」(事務局:兵庫県立大学環境人間学部教授 木村玲欧氏)とレジリエンス研究教育推進コンソーシアム(会長:林春男氏)の第3回共同シンポジウムが2023年2月14日に開催された。テーマは「地震火山観測研究が目指すレジリエンスの向上」。全国の地震学・火山学などの理学・工学系研究者が参画する「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」について、最新の状況が発表された。4回にわたり、発表内容を紹介する。第1回は、新潟大学危機管理センター教授の田村圭子氏が講演した「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の紹介」について。
1.研究計画の概要
現在行っている計画は、大きく分けて4つの研究から構成されています(図表1)。1つ目は地震・火山現象の解明のための研究です。地震や火山噴火という現象を、過去の発生事例も含めて、物理・科学過程から研究するものです。2つ目は地震・火山噴火の予測のための観測研究です。いつ起こるのか、どういった被害を及ぼすのかということを知るための基礎的な研究をしています。3つ目は、地震・火山噴火の災害誘因予測のための観測研究です。特に災害が発生してからの即時予測手法などについて研究しています。4つ目は、地震・火山噴火に対する防災リテラシー向上のための研究です。研究内容を国民の皆さんに分かってもらい、個人や組織に防災リテラシーを高めてもらうなど、研究成果を使って災害の軽減に貢献する方法を研究しています。
これらの4つの研究に加えて、総合的な研究も進めています。研究者がやりたいことをやるだけではなく、社会要請に応えるということが総合的な研究の肝です。今後発生が危惧される南海トラフ沿いの巨大地震、首都直下地震、千島海溝沿いの巨大地震、そして桜島大規模火山噴火や、多くの方が亡くなった御嶽山の水蒸気噴火のような高リスク小規模火山噴火について、研究者がみな関わりながら研究を進めています。
2.研究体制
研究体制としては、東京大学地震研究所がヘッドで、その下に研究参画機関を束ねる地震・火山噴火予知研究協議会を設置しています(図表2)。
実際に研究を進めるのは8つの計画推進部会です。地震(現象解明)部会、地震(長期予測)部会、地震(中短期予測)部会、火山部会、史料・考古部会、災害誘因評価・即時予測部会、防災リテラシー部会、そして全体の研究を支える観測研究基盤部会があります。
8つの計画推進部会の参画機関は図表3のとおりです。総務省関連の研究機構と、文部科学省関連として26校の大学および3つの研究機関、そして経済産業省や国土交通省、都道府県の研究機関と、全部で35の参画機関があります。これを地震の起こりやすさと火山配置を示した地図に落としたものが図表4ですが、地震や火山のリスクが全国に広がっているように、全国の研究機関が参画していることがお分かりいただけると思います。
8つの計画推進部会は研究を効率的に推進するために専門分野ごとに分かれていますが、これを理学の研究の流れに沿って説明すると図表5のようになります。地震・火山は地殻災害なので、まずは地震計などにより、現象を観測しなければいけません。そして、観測した情報に基づき、地震・火山の発生の成り立ちを解明してモデル化し、モデルに基づいて次に起こることをシミュレーションして予測につなげ、予測を社会側が受け取って対策につなげて実装するという流れです。8つの部会は、このような関係性の中で地震・火山研究全体を支えています。
Joint Seminar減災・レジリエンス研究教育推進コンソーシアム 第3回共同シンポジウムの他の記事
- 防災リテラシーの挑戦~人文社会科学から見た地震火山研究
- 火山現象の解明と予測 ~阿蘇山を事例として
- 地震現象の解明と予測~現状と課題
- 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の紹介
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方