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これまで企業は、財務要素に関わるリスク管理を強化し、全社的リスク管理体系(Enterprise Risk Management: ERM)を構築してきた。現在の企業は、サステナブル経営を推進し、社会課題のビジネス化への検討も視野に入れ、新たなビジネス機会を探索している。このような企業をめぐる環境の変化は、経営に非財務要素(ESG:環境、社会、企業統治)への関与を強めている。

ESGリスクの取り込みは、企業価値の変動に関する不確実性を高める。ESGに関わるリスクの取り込みによる想定外の事態の発生への対応に万全を期するためには、ESGリスクへの理解を深め、社会課題のビジネス化に伴うソーシャルリスクの構造を解明してゆく必要があろう。リスク管理は、ビジネスを取り巻く状況の変化に応じて常に進化させてゆかなければならない。環境変化により、管理対象が拡大すれば、新たなリスクに対する特定・評価を強化し、リスクプロファイルの理解に努める必要がある。これまで企業は、主として財務要素に関わるリスクへの対応を深化させ、これらを既知リスク化した。その結果、予めその発生パターンについて蓋然性を持って予測し、対処方法を確立してきた。このように予測と管理によって経営の安定を図ってきたものといえる。しかし今後、環境・社会問題を経営に取り込み、事業を通じて社会的価値と経済的価値の両立を図ろうとする過程のなかで未知リスクが発生し想定外の事態を招くとするなら、そのような新たな経営環境に対応する準備を急ぐ必要がある。

一般に想定外の事象の予測は難しい。そして、未経験の事態への対応の選択肢を十分準備することは困難である。伝統的な既知リスクのように、前もって予測しそれへの対応策を用意しておき、事態が発現すれば処方箋に従って適切に対応するといった管理型の対応はできなくなる。そのため、不確実性に対するリスク構造の解明を急ぎ、新たな事態への適応力の強化が必要となる。