2023年までにCO2排出量半減の目標は達成できるのか(イメージ:写真AC)

■重要なマイルストーン

昨年の日本は記録的な猛暑と大雨に見舞われたが、これらの異常気象は日本だけでなく、世界中でひんぱんに発生し、欧州、南アジア、アフリカ、アメリカ、カナダなど、多くの地域で半ば日常化している。グテーレス国連事務総長は「気候野心サミット」で、「人類は地獄の門を開けてしまった」と警告した。

このような背景を踏まえ、わたしは気候変動に再び焦点をあてる連載を始めようと思い立った。理由は二つある。一つは3年前に執筆した「昆正和の気候クライシスとBCP」では、当時は気候危機の認識が新型コロナウイルス・パンデミックほど高くなかったこと。もう一つは、気候リスクを単に原因事象として紹介するのではなく、皆さんの生活やビジネスにどのような影響を及ぼすのかを実感できるように、つまり結果事象として伝えたいと考えたからである。

2030年をマイルストーンとして起きうる事態のシナリオを描く(イメージ:写真AC)

そこで一つの鍵となるのが「2030年」である。地球の平均気温を産業革命前の水準と比較して(安全圏とされる)1.5℃に抑えるためには、2030年までにCO2の排出量を半減させる必要がある。しかし現実は目標にはほど遠く、2030年には世界の平均気温が1.5℃を超えてしまう可能性がある。わたしは2030年を重要なマイルストーンととらえ、この年までに何が起こりうるのかを"シナリオ"として描いてみることにした。