明治(東京)は10日、能登半島地震の影響で需要が急増している乳児用の液体ミルクについて、増産する方針を明らかにした。液体ミルクはお湯で溶く必要がなく、断水時なども使いやすい利点がある。1月のこれまでの注文は、平常の月と比べて2倍超で推移している。被災地向けに支援物資として提供が進む中、今後、被災地以外からも非常時の備えとして需要が高まると判断した。
 明治は、国内で液体ミルクのシェア約7割を持つ。能登地震発生後、日本栄養士会などからの要請に応じて、被災地に缶入り液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」約3700本を無償提供した。同時に、被災地以外の自治体や企業などからも「備蓄向けとみられる注文が増えている」(広報)といい、需要増に対応できる規模の増産が必要になったという。
 能登地震の被災地に対する政府の「プッシュ型支援」でも、9日までに被災地に送られたのは粉ミルク648点に対し、液体ミルクは4810本で主力となっている。農林水産省の担当者は「自治体側から『水が使えず、液体ミルクが多く欲しい』との要望があった」と説明。石川県輪島、珠洲両市を中心に被災地では大規模な断水が続いており、液体ミルクを求める声が強いようだ。
 液体ミルクは東日本大震災などを契機に国内メーカーによる生産を求める消費者の声が高まり、2018年に製造・販売が解禁。明治は「災害時に限らず、普段から外出先で簡単に授乳できるメリットがある」(広報)として普及に力を入れている。
 ただ、粉ミルクより割高という事情もあり、22年の乳児用ミルク市場での液体ミルクの構成比は、販売額でみて約3%にとどまっており、欧米各国に比べて低水準となっている状況だ。 
〔写真説明〕明治の乳児用液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」(120ミリリットル)(同社提供)
〔写真説明〕能登半島地震後に受注が増えている乳幼児用の液体ミルク=10日午後、東京・霞が関

(ニュース提供元:時事通信社)