メンタルヘルス不調の原因と傾向、企業のリスクと対策
10人に1人以上がメンタルヘルス不調

惠島 美王子
元警察の刑事部出身の特定社会保険労務士/健康経営エキスパートアドバイザー。交番・交通課勤務を経て、本部刑事部捜査第二課・所轄刑事課知能犯係において、詐欺・横領・贈収賄事件等の知能犯捜査に従事。その後、法律事務所、社労士事務所に転職後、2022年元刑事の見知を活かした労務リスク対策に特化した社労士事務所を設立。
2024/05/07
元刑事の社会保険労務士が解説する企業のリスク対策
惠島 美王子
元警察の刑事部出身の特定社会保険労務士/健康経営エキスパートアドバイザー。交番・交通課勤務を経て、本部刑事部捜査第二課・所轄刑事課知能犯係において、詐欺・横領・贈収賄事件等の知能犯捜査に従事。その後、法律事務所、社労士事務所に転職後、2022年元刑事の見知を活かした労務リスク対策に特化した社労士事務所を設立。
厚生労働省が実施している令和4年労働安全衛生調査(事業所調査)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した従業員または退職した従業員がいた事業所の割合は13.3%(令和3年調査10.1%)となっており、メンタルヘルス不調者の割合は増加傾向にある。これは、単純平均で10社に1社以上がメンタルヘルス不調による休業・退職者がいたことになる。
さらに、現在の仕事で強いストレスを感じている従業員の割合は、令和4年労働安全衛生調査(個人調査)で82.2%(令和3年調査53.3%)となっており、高い水準であることが分かる。具体的なストレスの内容は、仕事の質・量、仕事の失敗・責任の発生等、対人関係(セクハラ・パワハラ含む)の割合が高く、職場の大きなストレス要因となっている。
ストレスについて相談できる人がいる従業員の割合は91.4%と比較的高く、相談できる相手としては、家族・知人68.4%%が最も多く、次いで同僚68%、上司65%の順となっている(令和4年労働安全衛生調査)。この統計から分かることは、従業員もまずは身近な存在に相談するケースが実態であり、職場で相談しやすい体制などを計画的に構築していくことは、今後企業にとってますます求められることと言えよう。
では、企業においてどのような取り組みを計画的に行っていけばよいのだろうか。職場のメンタルヘルス対策は、一次予防(健康の維持・増進)、二次予防(早期発見・早期治療による重症化防止)、三次予防(再発防止・機能低下防止)と3段階にわけて対策を行っていく必要がある。ストレスチェックに代表されるような一次予防のみを実施しても顕在化したメンタルヘルス不調者に対応することはできない。また、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援に代表される三次予防だけを実施しても不調者へのリスク軽減にはつながらない。各企業においては、これら一次予防から三次予防にいたるまでの取り組みを網羅し計画的に進めていく必要がある。
元刑事の社会保険労務士が解説する企業のリスク対策の他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方