【ワシントン時事】米政府が中国製の電気自動車(EV)への警戒を強めている。通商代表部(USTR)は、中国が巨額の補助金や原材料調達などへの支援を通じ、「市場支配を追求している」と批判。米議会に「対抗策」を提示する方針を示した。関税引き上げ案も浮上している。
 米メディアが21日までに、バイデン政権が議会に宛てた書簡の内容として伝えた。バイデン大統領が再選を目指す大統領選を今秋に控え、労働者層の支持拡大を意識した保護主義的な動きが顕著になっている。
 米政府は、EV購入者に最大7500ドル(約110万円)の税額控除を適用する優遇策を導入。北米での最終組み立てなどの要件を設け、中国製を対象から除外した。トランプ前政権が課した25%の対中制裁関税も維持したままだ。
 USTRは、中国が重要鉱物や部品といった「EVのサプライチェーン(供給網)全体の支配」をもくろんでいると強調。日本を含む先進7カ国(G7)などと協力して対応する姿勢を示した。
 中国製EVは低価格を武器に欧州などで急速に存在感を高めている。昨年10~12月期に中国の比亜迪(BYD)は世界販売台数で米テスラを抜き、初めて首位に立った。
 調査会社によると、中国製EVの平均価格は3万ドル(約440万円)前後と、欧米メーカーの半分程度。中国政府は2016~22年に計570億ドルの補助金を投入。地方政府も減税などの支援策を講じている。中国の人件費が欧米よりも大幅に低いことも、価格競争力を高めている。
 欧州連合(EU)は昨秋、中国製EVに対する補助金の状況を調査すると発表。関税引き上げも視野に入れており、中国メーカーに逆風が吹いている。ただ、調査会社は「輸入制限は雇用や自動車メーカーの保護にはつながるが、価格差の問題には対応できない」と分析。包括的な対策が必要だと指摘している。 

(ニュース提供元:時事通信社)