2024/03/04
全社的サイバーセキュリティ対策のすすめ
「リスクアセスメント」
「あるべき姿」とのギャップを把握するには、「リスクアセスメント」も実施する必要があります。
前項までの工程にて、「範囲の明確化」、「資産の洗い出し・管理状況」「ITシステムの利用状況」など、必要な要素は抽出できていると思います。
「リスクアセスメント」とは、それらに対してどのようなリスクが潜在しているのかを特定していく作業になります。
昨今の企業活動においては、さまざまなリスクが潜在しています。それらリスクを特定し、そのリスクを分析して影響度の算出を行い、具体的な対策の立案や対策の優先順位設定に活用していくものになります。
ここで重要なのは、リスクアセスメントに対する「組織としての取り組み方」を明確にして進めていくという点です。
サイバーセキュリティ対策と利便性は表裏一体な面もあります。リスクを過剰評価し過ぎたあまり、現場の生産性が下がるといった事象は情報セキュリティマネジメントにおいて、しばしば耳にするものです。
このような事態が発生しないように、現実的な目線でリスクを評価していく必要があります。具体的には、サイバーセキュリティ対策は企業や組織の重要な経営課題だということを認識し、経営層がリーダシップを取って推進することです。
企業・組織として、経営層がリスクを認識し、現場の利便性や生産性も考慮した上で評価していくようにしてください。場合によっては、リスクを許容するという対応が必要になる場面も出てくるかと思います。
なお、前回にもお伝えしましたが、サイバーセキュリティ対策とは、企業が保有する「情報」を保全することに加えて、「情報システム」、「情報通信ネットワーク」の技術的安全管理措置を施こすことを指します。
これは、リスクアセスメントの際にも重要な考え方となりますが、外部からの悪意のある攻撃だけがリスクではないという点に留意してください。
従業員による情報持ち出しや不正送金などの内部不正の可能性、自然災害や大規模停電等の発生時の事業継続やデータ復元の必要性・実行性なども、リスクとして特定し分析する必要がります。
また、外部のクラウドサービスの利用や、外部ベンダー等の第三者への業務委託などがある場合にも、管理責任は委託元である自組織となるものもありますので、それらもリスクとして特定することが必要です。
リスクへの考え方は、企業や組織が保有する情報の種類・量・内容、ITシステム等の利用状況、事業規模などにより異なり、大企業ともなれば膨大な量のリスクに対しての評価を行っていく必要があるかも知れません。ただ、その後の具体的な対策に関わる重要な工程であるということを意識し、しっかりと取り組むようにしてください。
今回は、サイバーセキュリティ対策の基本となる「現状の把握」のお話を中心にお伝えしました。
次回は、具体的にリスクを評価・分析し、実際の対策立案を考えていく上で必要な工程における推奨事項をお伝えしていきます。
執筆者
西村 健太郎
株式会社AnswerCrewLaboratory代表。通信キャリア、商社系IT企業にてデータセンター事業、クラウドサービス事業の立ち上げに従事し、企画・マーケティング・営業・事業推進などさまざまな業務を経験。現在は独立コンサルタントとして活動し、株式会社M&Kのプロジェクトに参画。企業のサイバーセキュリティ対策に関するコンサルティング業務やサービス導入支援、講演活動などを展開。
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全社的サイバーセキュリティ対策のすすめの他の記事
- 第4回:具体的な脅威・リスクのケーススタディ
- 第3回:脅威とリスクアセスメント
- 第2回:現状の把握とリスクアセスメント
- 第1回:サイバーセキュリティ対策の基礎知識
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