女性団員急死問題で揺れてきた宝塚歌劇団が、強硬に否定していた上級生らによるパワハラ行為を認め、歌劇団を運営する会社グループトップが謝罪する事態に追い込まれた。
 昨年11月の歌劇団側の調査報告書では、管理責任は認めつつも「いじめやハラスメントは確認できなかった」とし、当時の村上浩爾専務理事(現理事長)は「(パワハラの)証拠となるものをお見せいただきたい」と言い放った。しかし遺族側は、女性の携帯電話の通信記録ややけど痕の写真などの物証を突き付け、世間の激しい批判にもさらされた。
 女性の死去から半年。この間、本拠地の宝塚大劇場が2カ月間休演となり、華々しく催される予定だった創立110周年記念行事も中止に。歌劇団のモットーである「清く正しく美しく」のイメージは損なわれた。
 今回の問題は、個人によるパワハラ問題にとどまらず、創立以来の伝統や組織風土が、個の尊重や人権を重視する時代の潮流から取り残されていたことを強く印象付けた。
 集中的な鍛錬と高い士気に裏付けられた団員たちが演じ、歌い踊る舞台のレベルの高さと華やかさは多くのファンの熱烈な支持を獲得してきたが、その現状に甘えることは許されない。「ご遺族にこのようなことがないよう、お誓いした」(阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長)という言葉にたがわぬ組織風土改革が迫られている。 
〔写真説明〕宝塚大劇場の看板=兵庫県宝塚市

(ニュース提供元:時事通信社)