モノやサービスを提供できても、お金をもらう行為が続けられないと事業継続はできない(イメージ:写真AC)

BCPで規定した計画と現実との間のギャップを、多くの企業に共通の「あるある」として紹介し、食い違いの原因と対処を考える本連載。現在は第2章として「BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コスト」のなかに潜む食い違いを論じています。前回に続いて事業継続戦略の「あるある」を取り上げますが、今回はお金にまつわる問題として、非常時における請求書の発行業務を考えてみます。

第2章
BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コストの「あるある」

(5)BCPの実効性

②事業継続戦略
・DRサイトにはプリンタがなかった(大手・製造業・情報部門)

EDIなどの電子的な取引の普及が進んでいますが、まだまだ紙の請求書を出力する必要がある企業はかなりの割合にのぼると思います。

担当者「メインサイトのシステムが停止した場合には、DRサイトに引き継ぎます」

「すぐに切り替わるんですか?」

担当者「ウォームサイトなのでシステムの再開には多少の時間はかかります」「で、訓練は必ずここで止まるんです」

「なぜですか?」

担当者「DRサイトにはプリンタがないんです」

プリンタは当初予算の問題で導入できなかったということでしたが、事業継続を阻害する重大な課題だと認識しており、次に予算を取る時には最優先で導入する予定だとおっしゃっていました。

この事例は、DRサイトでシステム処理を引き継げるよう代替戦略を採用しているものの、お客様に最後の最後にお届けする大事なものが出せないために戦略が完結しないという事例ですが、もう少し続きがあります。

担当者「請求書を出せたとしても、次の問題があります。DRサイトのメンバーではさばききれない量が出るんです。やり方も教えていないですし」

印刷物をさばく場所はすでに確保されており、紙と人が流れる動線も考えてありました。

「DRサイト近辺の拠点から動員できないんですか?」

担当者「拠点の従業員をかき集めれば何とかなります」

「そのためには?」

担当者「教育ですよね」

予算の問題で一時的に課題を抱えてはいましたが、次に何をする必要があるのかが把握できており、その解決手段を見通すことができている好例です。

DRサイト周辺の拠点で、請求書発行のために業務負荷が急増する(イメージ:写真AC)

この事例では、メインサイトのある遠隔地で災害が発生することによって、DRサイト周辺の拠点では自分たちが被災していなくても業務負荷が急激に高くなるという事象に見舞われます。限りある人的リソースを、突発的に生じた「印刷した大量の請求書をさばく」という業務に振り分けなければならないわけですから、その拠点は「従業員」というリソースが枯渇した状態になります。

従って、災害の影響を受けていない拠点であっても、拠点の業務のうち最低限行わなくてはならない「重要業務」を考えておき、これを担当する従業員以外をリソースとして事業継続要員に充てていくことになります。