請求書を出さないとお金はもらえない
第9回:非常時における経理処理

荻原 信一
長野県松本市出身。大学卒業後、1991年から大手IT企業に勤務。システム開発チームリーダーとして活動し、2005年にコンサルタント部門に異動。製造業、アパレル、卸業、給食、エンジニアリング、不動産、官公庁などのコンサルティングを手がける。2020年に独立。BCAO認定事業継続主任管理士、ITコーディネータ。
2024/05/14
ざんねんなBCPあるある―原因と対処
荻原 信一
長野県松本市出身。大学卒業後、1991年から大手IT企業に勤務。システム開発チームリーダーとして活動し、2005年にコンサルタント部門に異動。製造業、アパレル、卸業、給食、エンジニアリング、不動産、官公庁などのコンサルティングを手がける。2020年に独立。BCAO認定事業継続主任管理士、ITコーディネータ。
BCPで規定した計画と現実との間のギャップを、多くの企業に共通の「あるある」として紹介し、食い違いの原因と対処を考える本連載。現在は第2章として「BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コスト」のなかに潜む食い違いを論じています。前回に続いて事業継続戦略の「あるある」を取り上げますが、今回はお金にまつわる問題として、非常時における請求書の発行業務を考えてみます。
②事業継続戦略
・DRサイトにはプリンタがなかった(大手・製造業・情報部門)
EDIなどの電子的な取引の普及が進んでいますが、まだまだ紙の請求書を出力する必要がある企業はかなりの割合にのぼると思います。
プリンタは当初予算の問題で導入できなかったということでしたが、事業継続を阻害する重大な課題だと認識しており、次に予算を取る時には最優先で導入する予定だとおっしゃっていました。
この事例は、DRサイトでシステム処理を引き継げるよう代替戦略を採用しているものの、お客様に最後の最後にお届けする大事なものが出せないために戦略が完結しないという事例ですが、もう少し続きがあります。
印刷物をさばく場所はすでに確保されており、紙と人が流れる動線も考えてありました。
予算の問題で一時的に課題を抱えてはいましたが、次に何をする必要があるのかが把握できており、その解決手段を見通すことができている好例です。
この事例では、メインサイトのある遠隔地で災害が発生することによって、DRサイト周辺の拠点では自分たちが被災していなくても業務負荷が急激に高くなるという事象に見舞われます。限りある人的リソースを、突発的に生じた「印刷した大量の請求書をさばく」という業務に振り分けなければならないわけですから、その拠点は「従業員」というリソースが枯渇した状態になります。
従って、災害の影響を受けていない拠点であっても、拠点の業務のうち最低限行わなくてはならない「重要業務」を考えておき、これを担当する従業員以外をリソースとして事業継続要員に充てていくことになります。
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