2024/05/18
防災・危機管理ニュース
【北京時事】ロシアのプーチン大統領は16、17両日、通算5期目の任期入り後の初外遊として中国を訪れた。ウクライナ侵攻を巡って対立する米欧諸国をにらみ、習近平国家主席との結束を誇示。ただ、経済面での中国依存が加速するロシアと、欧州などとも安定した関係を築きたい中国では、思惑にずれもある。「対米共闘」で利害が一致する半面、首脳間には微妙な温度差が垣間見えた。
「中ロの安全保障上の脅威となる(米国の)措置を強く非難し、米国の封じ込め策に対する連携を強化する」。16日、中ロ首脳会談後に発表された共同声明には、米国を名指しで批判する文言が並んだ。北大西洋条約機構(NATO)や米英豪の「AUKUS(オーカス)」といった米主導の安全保障枠組みの伸長を中ロ共同でけん制した。
声明では中ロ合同軍事演習の規模拡大や、人工知能(AI)、宇宙、通信分野などでの協力も明記。米国が警戒感を一層高めるのは必至だ。
軍事に加え、中ロの貿易や投資、経済活動における連携強化も確認された。中ロ間の貿易総額はウクライナ侵攻を挟んだ3年間で2倍超に膨らみ、ロシアの「戦時経済体制」を支える屋台骨となっている。
プーチン氏は今回、経済学者出身のベロウソフ新国防相のほか、エネルギー企業トップらを率いて訪中。ロシアと国境を接し、経済的な結び付きが強い黒竜江省も訪れ、「チャイナマネー」のつなぎ留めを図った。中国にとっても、ロシアは安価な天然資源の供給元であると同時に、米欧との貿易摩擦の焦点となっている電気自動車(EV)などの輸出先として魅力がある。
「蜜月」を演出する一方、習氏は16日、会談後の記者発表で「中ロ関係において堅持する五つのこと」の筆頭として「非同盟、非対立、第三国を標的にしない」原則を挙げた。「非同盟」は中国外交の基本方針で、対ロ政策でもしばしば用いられる表現だ。ただ、同日の交流行事で「ロ中関係は史上最高」と持ち上げたプーチン氏と比較し、距離を取っている印象は拭えない。
習氏は16日夜、居住・執務する「中南海」にプーチン氏を招いて再度会談し、ウクライナ問題を集中的に取り上げた。習氏としては、関係改善を急ぐ欧州に対し、ロシアに一定の働き掛けを行っているとアピールする狙いがあったもようだ。
ただ、習氏は「ロシアとウクライナ両国が認める国際平和会議の適時開催を支持する」と指摘。和平推進を目指し6月にスイスで開催予定の多国間会議はロシアが出席を拒んでおり、習氏は同会議を評価しない姿勢を示した形だ。
〔写真説明〕16日、北京の国家大劇院で並んで座るロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方