【北京時事】トランプ米大統領の2期目就任から100日。145%もの追加関税を課された中国では、ネット上でトランプ政権を批判する動画が続々と発信されている。習近平政権は、米国への反発をあおり、中国国内の結束を呼び掛けることで苦境を乗り切る考えだが、背景には打開する道筋が見えないという焦りもありそうだ。
 中国国営新華社通信は4月上旬、人工知能(AI)を利用して作成した約3分の動画を公開。「タリフ」(関税)と名付けられたロボットが、米国の国益のために輸入品へ高関税を課すよう命令されるが、米経済への大打撃を予見し、最後は自爆するという内容だ。
 SNSでも、AIを使ったとみられる動画が拡散されている。このうち、スーパーマンやスパイダーマンといった米国を代表するキャラクターが工場で作業している動画は、トランプ氏が掲げる「製造業の米国回帰」を皮肉っている。
 当局はこうした動画を容認する一方、高関税が中国経済に与える悪影響などについては言論統制の対象としている。中国社会科学院は4月6日、傘下の研究機関「公共政策研究センター」の閉鎖を発表。台湾メディアは、同センターの研究者が、中国による対米報復関税を「完全に誤っている」と批判する文章をSNSに投稿したことが一因との見方を伝えた。
 米国に対して強気の姿勢を崩さない中国だが、足元では不動産不況に伴う内需低迷が続き、対米貿易が長く停滞すれば、景気や雇用へのさらなる打撃は必至だ。北京の経済界関係者によると、米国と取引のある製造・輸出業者が多い南部の広東省などでは、既に雇い止めや閉業の動きが出ているという。
 北京の外交筋は、中国はトランプ政権との交渉を望んでいるものの、米側の具体的な要求や、接触すべき相手が分からず足踏みしている状態だと指摘。対米で糸口がつかめないため、現在は欧州や東南アジアなどとの連携を強め、「来たるべき米中交渉に向けて有利な立場をつくろうとしている」と分析した。 
〔写真説明〕中国のSNS「抖音(ドウイン)」に投稿された、スーパーマンが工場で作業している動画(抖音の誰比※王※の投稿より〈※=リッシンベンに董〉)
〔写真説明〕中国のSNS「抖音(ドウイン)」に投稿された、スパイダーマンが工場で作業している動画(抖音の誰比※王※の投稿より〈※=リッシンベンに董〉)

(ニュース提供元:時事通信社)