ライドシェアを巡り、政府はIT事業者が参入する「全面解禁」の結論を先送りした。当初から慎重姿勢だった国土交通省は「安全が大前提」と強調。4月から始まった「日本版ライドシェア」の柔軟運用を打ち出しつつ、客を乗せるのはあくまでタクシー事業者を介在させた自家用車という一線を守った。
 日本版ライドシェアは、配車アプリでタクシーが足りない地域や時間帯に限定して始まった。最新の数字では、通常のタクシーと同等以上の頻度で稼働。アプリで運転手と客がマッチングできた割合は、東京や京都などで導入前は7割程度だった時間帯でも、9割以上に改善した。
 タクシー事業者が一般の運転手を雇い教育した上で、運行管理や車両整備を行う。米配車サービス大手「ウーバー」などが海外でしているように、運転手と客を直接マッチングさせるだけでは、同省は安全を担保できないとみている。斉藤鉄夫国交相は31日の閣議後記者会見で「運転手と車両の安全、事故が起きた時の責任、働く方の労働環境。この三つが議論の大前提」と強調した。
 同省はまず年内は効果の検証に注力する傍ら、雨天や大規模イベントなど一時的な需要にもライドシェアを行えるよう制度を改善。運転手の管理のデジタル化も進める。配車アプリが普及していない地方部での導入を後押しするほか、導入地域でのタクシーの平均営業収入の推移も見て、既存のタクシー事業への影響も調べる。 

(ニュース提供元:時事通信社)