2024/06/21
防災・危機管理ニュース
鹿児島県警の前生活安全部長、本田尚志容疑者(60)が内部文書を漏えいしたとして起訴された。同容疑者はその動機を「本部長の隠蔽」への告発と訴える。捜査の過程でウェブメディアが捜索を受けたことに批判の声も上がるなど、事件は異例の展開をたどった。
札幌市のライター小笠原淳さん(55)の元に4月3日、差出人不明の茶封筒が届いた。小笠原さんによると、「闇をあばいてください。」と印字された文書のほか、当時公表されていなかった県警枕崎署員の盗撮事件や霧島署員のストーカー事案に関する書類など計10枚が入っていた。
小笠原さんに文書を宛てた理由を、本田容疑者はその後、「本部長が不祥事を隠蔽(いんぺい)しようとしたため」と説明。面識はなかったが、「県警を糾弾する記事を書いていて、取材してくれると考えた」という。弁護人も「内部通報のようなもの」と主張する。
捜査関係者などによると、本田容疑者は文書の問い合わせ先として、県警前刑事部長の名前や電話番号を記載。盗撮事件で「隠蔽を指示した」のも、本部長ではなく前刑事部長と記していた。
本田容疑者は、自分が送ったと発覚するのを避けるためと話しているという。だが、ある捜査幹部は「無関係の刑事部長を巻き込んだのは不可解で、正義感から告発したか疑問」とし、公益通報には当たらないとした。さらに「警察庁や他の公的機関に相談するなど、ほかに方法はあった」と批判した。
事件では、本田容疑者逮捕に至る経緯も異例だった。発端は、ニュースサイト「ハンター」に昨年10月、県警の内部文書「告訴・告発事件処理簿一覧表」が掲載されたことだ。県警は今年3月、計100件超の事件捜査に関する文書が流出したと発表。4月8日には地方公務員法違反容疑で曽於署の巡査長を逮捕した。
関係者によると、県警は同日、関係先としてハンターの代表中願寺純則さん(64)の自宅を捜索。パソコンとスマートフォンを押収した。その際、小笠原さんと共有していた資料が見つかり、本田容疑者の逮捕につながったとみられる。
捜索を巡っては、新聞労連が抗議声明を発表するなど、批判の声も上がる。中願寺さんも「取材源を暴く行為。報道や告発者に対する圧力だ」と強調している。
〔写真説明〕ライターの小笠原淳さんに届いた文書。本田尚志容疑者が郵送したとみられ、1枚目には「闇をあばいてください。」と書かれている(一部画像処理しています)=19日午後、札幌市内
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方