【カイロ時事】イラン最高指導者ハメネイ師は地下壕にいる―。国外に拠点を置く反体制派メディアは「情報筋」の話として、最高指導者が潜伏生活に入ったと報じている。イスラエルは13日にイランへの大規模攻撃を開始。「死の危険」に直面するハメネイ師が、ロシアへの亡命の準備を進めているとの臆測も浮上した。
 15日の報道によると、ハメネイ師が避難したのは、首都テヘラン北東の小高い山もあるラビザン。地下施設があり、攻撃開始から数時間後に家族と共に身を隠したという。国外の反体制派が動静をどの程度正確に把握できているかは不明だが、ハメネイ師は昨年の4月と10月にイスラエルの攻撃を受けた際も、同じ場所に移動したとされる。
 米メディアによれば、イスラエルは13日以降、ハメネイ師殺害を具体的に計画し、実行の機会もあった。しかし、トランプ米大統領が反対し、実現しなかったという。
 イランの核武装阻止を巡り、協議を優先する米国と、武力解決を図りたいイスラエルの「齟齬(そご)」が指摘される。ハメネイ師をイスラエルに対する脅威の「元凶」と見なす同国のネタニヤフ首相は16日、殺害が「紛争を終結させる」と明言した。
 パレスチナのイスラム組織ハマスの最高指導者だったハニヤ氏は昨年7月、テヘランの厳重な警戒下にある宿泊施設で暗殺された。今回の攻撃でもイランの要人が相次いで命を奪われており、ハメネイ師はこれまで以上に身の危険を感じているとみられる。
 反体制派メディアは、情勢がさらに悪化した場合に備え、ハメネイ師の側近がロシア当局者と亡命について交渉しているとも伝えた。事実であれば、昨年12月に政権が崩壊したシリアのアサド前大統領と同様、突如ロシアに向かい、イランに政治の空白状態が生まれる恐れがある。 
〔写真説明〕イランの最高指導者ハメネイ師=13日、最高指導者事務所提供(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)