リスク対策.comでは、2026年に企業が備えるべきリスク10をまとめた。

2025年は、企業リスクの「質」が大きく変わった年だった。サイバー攻撃による事業停止、老朽インフラによる都市機能の寸断、猛暑と津波が同時に襲う複合災害、さらには火災やコンプライアンスリスクの再浮上など、「単独の危機」を想定した従来型のBCPでは対応しきれない事態が相次いだ。

2026年は、こうした2025年の実例を踏まえ、「止まること」「連鎖すること」「社会構造が変わること」を前提にした備えが企業に求められる。

以下に、2026年に企業が注視すべき10のリスクを整理する。

① 止まる前提のサイバー攻撃

2025年は、ランサムウェアなどのサイバー攻撃により製造業、物流が現実に止まった。アサヒHD、アスクル、さらには海外の主要空港における事業中断などの事例が示したのは、「バックアップがあってもすぐには復旧できない」という事実である。2026年は侵入を防ぐだけでなく、侵害後にどう事業を続けるかが焦点となる。ゼロトラストと分散バックアップ、さらに手作業への切替を含む「ハイブリッドBCP」が必須となる。

② 都市+自社インフラの老朽化

2025年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故は、老朽下水道が都市機能と企業活動を直撃することを示した。停電、通信断、ガス停止、道路封鎖はもはや「非日常」ではない。2026年は大災害ではなく日常的なインフラ障害を前提にした「スモールBCP」と、自社の建物・配管・ITの寿命管理が重要になる。

③ 常態化する複合災害

2025年7月のカムチャツカ地震では、津波警報と記録的猛暑が同時発生し、避難が熱中症リスクを高めた。2026年はオールハザードBCPに加え、マルチハザード(連鎖・同時多発)への初動判断力が問われる。単一災害の想定では対応できない危険性について考えておく必要がある。

④ 頻度・影響度ともに増した火災

2025年は大船渡や大分市、海外の大規模山火事、さらにモバイルバッテリー火災が相次ぐなど火災リスクが高まった。気候変動だけでなく、高齢化、空き家、可燃物の増加、物流倉庫の大型化が被害を拡大させている。2026年もこうした傾向は続く。企業は環境の変化と避難・初動体制を再点検すべきである。

⑤ 異常気象がもたらす別世界

40度超の猛暑、記録的豪雨、長期干ばつは、工場の操業、物流、従業員の健康を直撃する「日常リスク」となった。2026年は気象リスクをBCPの中心に据え、電力・水・人の脆弱性を再評価する必要がある。

⑥ 海外事業におけるレッドライン

地政学リスクが海外拠点の操業を一瞬で止める時代になった。2026年はどの国・どの条件で撤退・縮小するかという「レッドライン」を事前に定義する経営判断が不可欠である。

⑦ 「2025年の崖」が招くOTリスク

レガシーITや老朽VPN、制御系(OT)が放置されたままDXが進んだ結果、工場やインフラがサイバー攻撃の入口となっている。2026年はOTを含めたIT資産の棚卸しと更新戦略が事業継続の前提条件となる。

⑧ Gメンで強化される下請法

下請Gメンの活動が強化され、価格転嫁拒否や不当取引が摘発されている。2026年1月からは取適法が施行された。サプライチェーンのコンプライアンスも含め、平時からの契約・価格・取引慣行の見直しが必要だ。

⑨ 謝罪会見で問われる組織の本質

サイバー事故や不祥事の後、記者会見で企業のガバナンスと危機対応力が可視化される時代になった。危機時の説明責任と意思決定プロセスそのものがブランド価値を左右する。こうした万が一の事態なども想定し、記者会見などにも備えておく必要がある。

⑩ 危機の警鐘:リスク連鎖

2025年の最大の教訓は、「一つの危機が次の危機を呼ぶ」ことだった。熊の出現、モバイルバッテリーの発火など同一リスクの多発に加え、サイバー攻撃→操業停止→物流混乱→信用低下、地震→停電→猛暑→健康被害といった異なるリスク連鎖も視野に入れ、BCPを再設計する必要がある。

 

2026年に向けて企業が取るべき視点

2025年に起きた数々の事象が示したのは、「想定外」ではなく「想定の浅さ」である。2026年のリスク管理の本質は、止まることを前提に、連鎖することを前提に、さらに社会構造が変わることを前提に、BCPと経営判断を結び直すことにある。

詳細は、危機管理白書2026に掲載。