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最近の米国最高裁判所の「Ames v. Ohio Department of Youth Services」の判決において、判事らは、(差別的な扱いを受けたと主張する)多数派グループに属する原告が、「被告が多数派に対して差別的な雇用主であるという主張を裏付ける」追加的な状況を示す必要はないとの見解で一致した。

この判決や同様の訴訟を受けて、多くの雇用主が「逆差別」(多数派グループのメンバーに対する差別)を主張する雇用慣行責任(EPL)訴訟を受けることになりそうだ。これは、法的には新しいものではないものの、変化する社会意識や規制当局の監視を反映した、微妙なリスクを雇用主にもたらす。

*注:米国の雇用慣行責任(EPL)とは、企業が従業員や求職者に対して負う、雇用に関する法的責任全般を指す言葉。関係する法律は、公民権法、雇用における年齢差別禁止法、米国障害者法、公正労働基準法、家族医療休暇法などである。

前述のエイムズ事件の原告は普通の女性で、差別を受け、同性愛者の同僚に昇進の機会を奪われ、降格されて別の同性愛者の同僚に交代させられたと主張していた。最高裁判所の判決は、雇用主が多数派に対して差別行為を行っていることを示すという追加立証を不要としたことで、逆差別を主張する原告が立証しやすくなった。

このような訴訟が増加する可能性は、連邦政府レベルでの最近の政策、すなわち多様性・公平性・包摂性(DEI)イニシアチブの撤回にも一部起因している。連邦政府の請負業者に対する積極的差別是正措置(affirmative action policies)の廃止により、これまで保護されていなかった階層の人々が訴訟を起こす力を後押しした。つまり、強力なDEIポリシーを有する雇用主であっても、これまで優遇されてきた階層の個人から不当な扱いの申し立てを受ける可能性があるということだ。

さらに、一つの逆差別訴訟が集団訴訟に発展する可能性が高まっている。法律事務所デュアン・モリスの「Class Action Review—2025」によると、2023年の米国最高裁判所による「Students for Fair Admission v. President and Fellows of Harvard College」の判決を受け、昨年はDEIプログラムにおける逆差別を主張する訴訟件数が大幅に増加している。