2026/09/25
令和8年熊本地震
真夏に発生した令和8年熊本地震では、避難所や車中泊での避難生活に加え、災害対応にあたるボランティアや自治体職員にとっても暑熱環境への対応が大きな課題となった。停電や設備被害によって空調機器が十分に利用できない状況では、電力を使わずに暑さを和らげる対策が必要だ。
東京都では、熊本県からの要請に基づき、被災者や避難所を運営する関係者を支援するために暑熱対策に資するスタートアップ製品の提供を決定。SPACECOOL社の2製品とBiodata Bank社の1製品を支援物資として採用し、熊本県内77カ所に順次配布した。
車中泊環境の温度上昇を抑制
東京都は、SPACECOOL(東京都港区)と連携し、マグネット式放射冷却シート用の10mロール120本(加工後は1m×3mサイズ約300枚相当)と暑熱対策テント15基を被災地へ提供した。SPACECOOLは、製品の出荷から加工、搬送、避難所への搬入までを担当した。
マグネットシートは7月31日に出荷され、8月3日に福岡県八女市のパートナー企業である日本ワイドクロスの工場へ搬入された。その後、熊本県側との調整を経て加工量を決定した。また、受け入れ側の負担を減らすため、10mロールを3分割して再梱包し、避難所などで扱いやすいサイズに加工したうえで提供した。
提供したマグネット式放射冷却シートと暑熱対策テントには、放射冷却素材「SPACECOOL」が採用されている。この素材は、太陽光による熱の吸収を抑えるとともに、熱を赤外線として放射することで温度上昇を抑制する効果がある。マグネット式放射冷却シートは、車中泊車両の天面に貼ることで車内温度上昇の抑制を期待できる。
支援活動中の暑熱リスクを可視化
Biodata Bank(東京都渋谷区)からは、暑熱リスクを可視化するウェアラブルデバイス「熱中対策ウォッチ カナリアPlus」1万台を提供した。カナリアPlusは手首に装着する製品で、手首で計測した温度情報をもとに独自アルゴリズムで深部体温の上昇を推定する。深部体温の上昇を検知した場合、熱中症の危険度を知らせるためにLEDランプの変化やアラーム音、振動で利用者に通知する。暑熱環境下での支援物資の受け入れや搬出作業などに従事する災害ボランティアや自治体職員などへ配布された。
提供したモデルは、被災地でも確実に利用できることを重視した設計となっている。電池寿命は約5カ月で、充電機能や通信機能を搭載していない。あえて充電式としないことで、充電忘れやメンテナンス不足によるヒューマンエラーを防ぎ、配布後すぐに使用できることを特徴としている。
また、同社はメーカーが自社製品を全国から回収・リサイクルできる広域認定制度を取得している。使用済みデバイスを回収した場合、約99%の部材を再資源化することが可能で、災害廃棄物の削減にもつなげている。
今回の支援は、東京都がスタートアップ企業の技術を活用して被災地の暑熱対策を支援した取り組みだ。猛暑下での災害対応が常態化する中、避難者だけでなく、支援活動に携わる自治体職員やボランティアの熱中症対策も重要な課題となっている。避難所環境の改善とあわせて、こうした現場を支える技術の活用も求められそうだ。
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