記録的短時間を考慮した対応計画例

8月13日夕方から夜にかけて、千葉県内では局地的に非常に激しい雨が観測された。特に、千葉市では12時間降水量が348ミリと観測史上最大を記録し、道路冠水や交通への影響が相次いだ。県によれば15日16時時点で少なくとも県内で10人が死亡。帰宅時間帯と重なったこともあり、多くの人が突発的な豪雨への対応を迫られた。

近年の豪雨災害の特徴は、その発生から被害拡大までの速度にある。数日前から接近が予測できる台風とは異なり、積乱雲の発達による局地的大雨では、状況がわずか数十分から数時間で急変することがある。

気象庁と文部科学省が2025年に公表した「日本の気候変動2025」によれば、日本では極端な大雨の発生頻度が増加傾向にある。全国のアメダス観測データでは、1時間降水量80ミリ以上、3時間降水量150ミリ以上、日降水量300ミリ以上といった強度の高い降水は、1980年頃と比べておおむね2倍程度に増加している。雨の降らない日も増加しており、降水の「極端化」が進んでいることが指摘されている。

出典:文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2025」より引用

昨年2025年9月には、三重県四日市市の地下駐車場が1時間123.5ミリの猛烈な雨で地下2階まで浸水して274台が水没し、その前日には東京・品川区の戸越銀座商店街周辺でも短時間の記録的大雨により多数の店舗が浸水した。短時間の豪雨が都市機能を一変させる事例は、すでに毎年のように発生している。

こうした変化は、都市部における内水氾濫や道路冠水のリスクを高める要因となる。特に地下空間やアンダーパス、地下駐車場などでは、短時間に浸水が進行する危険性がある。

既存のタイムライン計画の見直しを

日本では、豪雨災害に対して、2014年以降、タイムライン(防災行動計画)が本格的に導入されている。国土交通省の定義によれば、タイムラインは、「災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、いつ、誰が、何をするか、に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画」をいう。

契機となったのは、2012年に米国ニューヨーク市などを襲ったハリケーン・サンディである。国土交通省の報告によれば、米国ではタイムラインが活用され、住民避難や交通規制などの対策が段階的に実施された。これを受け、日本でも河川管理者や自治体を中心にタイムラインの整備が進められ、企業や、住民一人ひとりが自らの避難行動を時系列で整理する「マイ・タイムライン」の取り組みも各地に広がっている。

画像を拡大 出典:国交省

たしかにタイムラインは、災害発生を前提に関係機関の行動を事前に整理し、判断の遅れや役割の混乱を防ぐ有効な手法と言える。台風や大河川の洪水など、ある程度のリードタイムが確保できる災害では、今後も重要な役割を担い続けることは間違いない。

一方で、今回のような局地的大雨では発生前に十分な準備時間が確保できない場合が多い。豪雨の中には発生から被害顕在化までの時間が極めて短いケースがある。

そのため今後は、従来のタイムラインに加え「豪雨発生後にどう行動するか」という視点を補強する必要がある。

すでに東京都は、台風接近時だけでなく短時間の急激な豪雨を想定したシナリオを含む「東京マイ・タイムライン」を公表しており、危険度分布やリアルタイム情報の活用も重視している。

東京都マイタイムライン

例えば、地下施設にいる際の退避行動、冠水道路に遭遇した場合の引き返し基準、車両を移動させるか放棄するかの判断基準、帰宅を継続するか職場等で待機するかの判断などを盛り込み、いつでも、どこでも使えるタイムラインに改良していくことが求められる。