2011/07/25
事例から学ぶ
東日本大震災では日本たばこ産業株式会社の被災により、輸入たばこの需要が一気に高まった。フィリップモリスジャパン株式会社(本社:東京千代田区)は、東日本地域での営業が一時的に中断したが、BCP に基づいて早期に事業を再開させた。同社の震災対応からは「外資系企業」特有の社員を守る姿勢が見てとれる。
同社は、スイスに本部を置くフィリップモリスインターナショナルのたばこ製品の販売促進およびマーケティング活動を行う。東京都千代田区の本社を含め、全国に4 カ所の営業拠点を持ち、全社員約1800 名のうち1200 名が営業職で構成されている。主な事務的機能は東京本社が担い、BCP を含むリスクマネジメント業務については本社のヒューマン・リソース(以下、人事部)が担当している。
BCP では緊急発生時には、社長をトップとした各部署の幹部10 名を中心とするSSMT(Special Situation Management Team)が組織されることが決められている。SSMT はBCP を基に同社全体の復旧方針を決定し、全社員に一元的なメッセージを発信する指示系統の役目を果たす。メンバー全員が常に連絡がとれるように、社内と自宅に業務用無線機を所持させているなど緊急時の連携を徹底して
いる。今回の震災でもSSMT のメンバーが地震発生後すぐに本社にかけつけ、東日本地域の業務が通常に戻る3 月24 日まで、全社のリーダーとして動いた。
■最優先は「通信機能の復旧」
同社の本格的な事業継続体制の確立は、2005 年にフィリップモリスインターナショナルが世界規模でリスクマネジメントの構築を呼びかけたことで始まった。同年に地震を想定したBCP を作成し、その後、徐々に想定範囲を広げ、パンデミック対策や製品ラインの事故が原因による製品の欠陥対策など、毎年テーマを変えて訓練を実施してきた。
最優先業務となるのは「メールおよびネットワークシステムの復旧」と「通常営業地域への製品提供やサポート」。目標復旧時間は、前者が発生から1 日、後者が3日以内としている。
幸いにも東日本大震災では、メールシステムへのダメージはなかった。そのため、全社員の安全を確保し、できるだけ早く通常営業地域へ製品提供することを急いだ。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方