2024年能登半島地震以前のBCP。当時の最優先は「生産及び供給の継続」。BCPでは今回と同じ震度6強の地震を想定していたが、実際の被害と復旧は全く異なった(石川サンケン提供資料を一部改変)

家電や自動車の電子制御に用いられるパワー半導体を製造する石川サンケン(石川県志賀町、田中豊代表取締役社長)。2024年元日の能登半島地震で半島内にある本社と3つの工場が最大震度6強の揺れに襲われた。多くの従業員が被災し、自宅が損傷を受けた従業員だけでも半数を超えた。BCPで『生産および供給の継続』を最優先に掲げていた同社は、従業員支援を最優先にした対応を開始したーー。

事例のPoint
❶難航した安否確認
・ 安否確認システムを導入するも、一部従業員の登録は自宅の電話番号で、被災によりつながらなかった。テレビでインタビューを受ける姿を見て安否確認できたケースも。

❷相談窓口の開設
・ 被災した従業員の生活支援のため、専用の相談窓口を設置。自社の支援に限らず、自治体や団体などの支援情報を幅広くまとめ提供した。

❸被害想定の設定
・ 甚大な災害では想定をはるかに超える被害が発生する。現実の復旧では柔軟さが重要。

被災した従業員

石川県内にあったサンケン電気のグループ会社を合併して1978年に設立された石川サンケン。前進の志賀サンケン工業から数えると60年以上、能登の地で事業を続けている。2024年元日の能登半島地震では石川県志賀町にある本社と同じく同町にある堀松工場と志賀工場、さらに能登町にある能登工場が最大震度6強の揺れに襲われた。

画像を拡大 (提供:石川サンケン)

管理総括部総務人事部長の福田貴裕氏は「被害を受けた従業員も多く、壁の破損、建物間の連結部分の損壊などが発生。電柱が折れ、電力を引き込めなくなった。とはいえ、どの工場も年末年始休業中で稼働していなく、幸いにも就業している従業員はいなかった。

石川サンケンは震度6弱を、2007年の能登半島地震で経験している。同社では、この地震後に、地震対策プロジェクトを発足させ計測機器の固定や柔軟性に富む配管の導入、棚の連結、薬品の漏えい対策などの揺れによる被害防止策を実施してきた。これらの対応は今回の地震で被害減少に効果的だった。工場で生産ラインを変更する際にも設備の固定などは、おざなりにすることなく確実に実施してきたことが報われたという。

それでも、昨年の能登半島地震では桁違いの被害が発生した。最も早く被災前の生産レベルに近づけられた能登工場でも、約2カ月の期間が必要だった。

従業員の支援を最優先としたのは、多くが被災者となったため。約1000人いる従業員のうち、全体の50%以上、525人もの従業員が何らかの住宅被害を受けた。その中でも大規模と中規模を含む半壊は30%ほど、約7%が地震で住宅が全壊する被害を受けた。避難所で生活する従業員も少なくなかった。これらはあくまで従業員の住宅被害に限った数字だ。