一定のルールの中で変化する

ここで言うキャピタルは、一般的に広く使われる土地、資本、労働の三大生産要素における“資本”よりも、広義な意味と思ってください。経済的な資本のみならず、人間資本や社会関係資本(ソーシャルキャピタル)といった多角的な観点でキャピタルをとらえているわけです。さて、ではこの「キャピタル概念」にシステムの観点を抱き合わせるとどうなるでしょう?

この連載で提唱するキャピタル概念は、自然資本、経済資本、人間資本、組織資本、社会関係資本、シンボル資本の6つの資本群からなります。4大経営資源として使われるヒト・モノ・カネ・情報の考え方に近いですが、ここでは、キャピタル概念を用いることで、より抽象的なレベルで概念化しようとしています。

キャピタルの種類と定義*

一方、システムとは、さまざまな要素の集合体ということができます。共通の目的を達成するためにシステムが設計されます。交通システムや教育システム(学校)、会計システムなどが分かりやすい例ですね。ここで重要なことは、システム内の各要素の結びつきはランダムではなく、ある一定のルールに乗っ取っているという点です。交通システムであれば、列車の運行には一定のルールがあるし、乗客と列車を結びつける時刻表が存在します。最もシンプルなシステムのモデルは、インプットとアウトプットからなるもので、その間に処理のプロセスが介在しています。

システムモデル(Davis, 1985. p.271**)

キャピタルとシステム、それぞれについて説明しましたが、自然や経済、人間、組織、社会、シンボルといったキャピタルが、あるシステムの中で一定のルールのもとに結びつき、相互依存の関係になっていくということがわかっていただけたかと思います。つまり、「キャピタル概念」にシステムの観点を抱き合わせると、私たちの日々の暮らしの上に成り立つ都市のあり方や、企業や自治体などの組織活動について、より深く理解することが可能となるのです。

組織は二人以上が集まって存在するわけですから、その時点で人というキャピタルが存在します。その二人(以上)が協力して組織の目的を達成しますので、システムにもなっているのです。そしてそこには、共通の目的・ルールが存在します。

刻々と変化する災害対応の現場における共通の目的は、対応にあたる組織、被災状況や時間軸によって変わってきます。ただ、どんな災害においても、インプットの部分にはなんらかのキャピタルが入って、災害からの復旧を目指すわけです。