2019/03/06
レジリエントな社会って何?
過去の教訓を未来に生かすために
災害対応では、現場の最前線で対応にあたる「人」の重要性はもちろんのこと、業務継続計画(BCP)や防災マニュアルといった組織資本、建物や情報通信インフラ等の経済資本、さらには外部からの応援の基礎となる社会関係資本がそれぞれ重要な役割を果たします。システムモデルに当てはめると、ひとたび災害が起きると、これらキャピタルが、相互に関係性を持ちながら、共通の目的(職員の安否確認や職場の迅速な復旧など)に向かっていく、という構図が描けるはずです。
この過程で、災害によってダメージを受けたキャピタルが別のキャピタルとの相互作用によって再構築されるということが起きます。例えば、災害により情報システムがダメージを受けた時、外部(社会関係資本)からのサーバ(経済資本)やデータ(組織資本)の提供により情報システムの運用が可能となります(詳しい事例については次回以降で紹介していきます)。
実際の災害の現場で何が起こっているのかという事実確認に加え、各キャピタルがどのような動きをするのかについて、抽象的なレベルで分析することで、過去の教訓を汎用的な知識に昇華させることができるんですね。さらには、このプロセスに潜むルールやパターンを見出すことができれば、BCPの策定などに有益な情報となります。要約して言えば、災害を6つのキャピタル×システムの視点で見れば全体像がより見えやすくなり、過去の教訓を未来の災害対応に生かすことが容易になるということです。
ウーバーイーツのビジネスから考える
冒頭の都市の事例に戻ると、平時でもキャピタル×システムのフレームワークを用いることで、街で起こっているさまざまな事象を一つ上の抽象レベルで理解することができます。
例えば、私は最近、都内の道を自転車で走るウーバーイーツの配達ドライバーをよく見かけます。ウーバー自体はキャピタルを内部保有せず、外部のキャピタルをマッチングすることでビジネスを成立させています。外部の人間資本が持つ活用可能な時間(フリー時間)と加盟飲食店で作られた料理(経済資本)に、利用者のニーズを組み合わせることで新たなデリバリーサービス(経済資本)を生み出しているんですね。今話題のシェアリングビジネスも同じ構造と言えます。同じように考えると災害対応は、自社だけではなく、外部との連携により成り立つことがご理解いただけると思います。それだけではなく、災害時には、発生からの時間経過の中で、キャピタル同士の関係性が変化していきますので、その状況を正しくつかむことが災害対応のポイントになるわけです。
以上のように、複雑で流動的な災害対応をより構造的に理解するために、キャピタル×システムのような思考フレームワークが有用だと考えられます。災害対応の構造的な理解を進めることは、ひいてはレジリエントな社会につながっていくと思います。これから、当フレームワークに基づいた災害対応について、東日本大震災の被災自治体の事例を基に考察していきますので、お付き合いいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
* A. Dean and M. Kretschmer, “Can Ideas be Capital? Factors of Production in the Postindustrial Economy: A Review and Critique,” Academy of Management Review,
vol. 32, no. 2, 2007, pp. 573-594. および M. Mandviwalla and R. Watson, “Generating Capital from Social Media,” MIS Quarterly Executive, vol. 13, no. 2, 2014, pp.97-113. を改変。
** 出展:G.B. Davis and M.H. Olson, Management information systems : conceptual foundations, structure, and development, McGraw-Hill, NY, USA, 1985. 出展:G.B. Davis and M.H. Olson, Management information systems : conceptual foundations, structure, and development, McGraw-Hill, NY, USA, 1985.
(了)
レジリエントな社会って何?の他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/06/16
-
-
企業の副業解禁とコンプライアンス対策を支援
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
2026/06/12
-
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/06/05
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方