サーバ室は、水没した庁舎の1階に設置されていたため、そこにあったすべての機械(経済的資本)が使用不能となりました。サーバ室内に保管してあったバックアップテープを含む、すべてのデータ(●●資本:D)が一時的に失われる事態となりました。水に漬かったサーバ類を同じ場所で修復することが不可能だったため、災害対策本部が設置された中央公民館(経済資本)において、業務に必要な情報システム、およびICT環境を一から作り直すことになりました。3月25日、大槌町と岩手県の職員、大槌町が情報システムの管理を委託している事業者の担当者が、庁舎内のサーバ室に入り、基幹系システムのサーバなど7台を回収しました。そして、ハードウエア事業者に、サーバ内のデータのサルベージを依頼しました。結果として、ハードディスクから復旧できたデータ、できなかったデータ、ハードディスクからは復旧ができなかったけれども、サーバ室内に残されていたバックアップテープから復旧されたデータに分かれました。
4月13日、サルベージが完了した住基データ(3月11日時点のもの)を使用して、仮サーバが設置されました。仮サーバのハードウエア(経済資本)は、情報システムの管理委託ベンダーから提供されました(●●資本:E)。これにより、大槌町は証明書発行を行う窓口業務を再開しました。4月25日に仮設庁舎が開所すると、サーバ機器類は公民館に残され、住民窓口と職員の執務室が仮設庁舎に移されました。

さて、DとEの資本は何でしょう? Dはデータです。「キャピタルの種類と定義」の表の右を見てください。そうですね、これは「組織資本」に当たります。Eはどうでしょうか?管理委託会社(ベンダー)からサーバが提供されたというくだりです。管理委託会社から提供されたハードウエアはモノですから経済資本ですが、ベンダーとの社会的なつながりによって実現したことですので、これは「社会関係資本」の働きとします。

大槌町では、地震と津波の発生後、災害対策本部が庁舎から中央公民館に移転し、さらに地震から約1カ月半後には役場機能が仮設庁舎に移りました。庁舎内にあったサーバ室は中央公民館に移りました。サーバ類は仮設庁舎開所後も公民館に残り、2カ所を結ぶネットワークシステムが構築されました。

高台にある中央公民館。大槌小学校校庭から(2012年1月19日筆者撮影)