2019/06/21
レジリエントな社会って何?
4つのU:汎用性、偏在性、唯一性、一貫性
Universality(汎用性)は、より標準的でオープンなシステムを活用することを意味しています。災害の各現場で異なるシステムが開発されると、後で統合することが難しくなります。
Ubiquity(遍在性)は、ツールとしてなるべく一般的に存在しているものを活用するという考え方です。第5回で述べた、普段使いしていないシステムは使えない、というメッセージの裏返しです。
Uniqueness(唯一性)は、ヒトや物に、ユニークな識別子をふって認識することです。例えば避難所における安否確認の際に、同姓同名の人がいた場合に別人だと区別する必要があります。
Unison(一貫性)は、データベース上の情報に一貫性を確保する必要性を指しています。データの取扱いに標準なルールが必要になることは先述の通りです。
4つのUは、データとシステム、それぞれの話を扱っています。共通の組織資本作成の際に参考になると思います。創造的対応は、マニュアルに書かれていない、その場に居合わせた個々人がそれぞれの経験値や感覚で物事に対処していくプロセスです。そのプロセスが多岐にわたり長期化すればするほど、後で集約することが難しくなります。つまり、創造的対応にも、最低限のルールがあるべきで、その最低限のルールに基づいた組織資本の活用が重要となります。
「災害対応の多様なステークホルダー間における共通の組織資本」については、まだ仮説的な考えで、私自身明確な答えを持っていませんが、この4Uの考え方は方向性の一つのヒントを与えてくれると思います。
少し概念的なお話となってしまいました。キャピタルの考え方が災害対応にどのように生かせるのか、うっすら輪郭をつかめていただけているでしょうか。次回は、創造的対応と、他のキャピタルについてのまとめが続きます。
* A. Dean and M. Kretschmer, “Can Ideas be Capital? Factors of Production in the Postindustrial Economy: A Review and Critique,” Academy of Management Review, vol. 32, no. 2, 2007, pp. 573-594. および M. Mandviwalla and R. Watson, “Generating Capital from Social Media,” MIS Quarterly Executive, vol. 13, no. 2, 2014, pp.97-113. を改変。
**Junglas, I. and B. Ives. 2007. “Recovering IT in a disaster: Lessons from Hurricane KATRINA,” MIS Quarterly Executive, (6:1), pp. 39-51.
(了)
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