2025/06/20
事例から学ぶ
柔軟性と合理性で守る職場
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
①出社率が変化しても機能する自主防災組織体制に
・出社率の高い管理職を自主防災組織の担当に選出。さらに各メンバーが多様な役割を担えるマルチタスク化を果たし、発災時の欠員リスクを低下させている。
②防災活動の啓蒙に東京都「事業所防災リーダー」を活用
・約80人の自衛消防組織メンバーが東京都「事業所防災リーダー」に登録。提供される防災関連の情報で、防災意識の向上と具体的な対策を学んでいる。
③備蓄品配布で混乱を防ぐ情報掲示
・備蓄品配布の案内などを倉庫内に掲示し、誰でもスムーズに配布できるようにしている。
低い出社率を前提に
今から14年前の東日本大震災を契機に防災マニュアルや災害用備蓄品、帰宅支援グッズ、安否確認システムをそろえ、防災対策を整備したカカクコム。事業成長にともなって従業員が増加する中、備蓄などを比例させるように拡大してきた。
しかし、転換期を迎えることになった。原因は新型コロナウイルスの流行だ。最も低い時期で出社率が10%ほどにまで低下し、従来の「オフィスにいる」を前提とした対策は現実的ではなくなった。総務部部長の永井健一氏は「たとえば、自衛消防組織の役割分担として、8階の避難誘導班は『佐藤太郎さん』と固定している状況でした。でも、出社していないわけです。これでは機能するはずがありません」と話す。
そこで着手したのが自衛消防組織の見直しだった。この変更は2段階で進んだ。最初はコロナ禍初期。「近いうちに従来の生活に戻るだろう」とみていたときだ。その後、流行が長期化すると「出社と在宅のハイブリッドワークが基本になるかもしれない」(永井氏)と考え2段階目の変更を実行した。
当初の変更は、自衛消防組織を担当する従業員の選出方法だった。出社率を踏まえて選考し、さらに管理職に就いている従業員を対象にした。永井氏は「出社していて、かつ指示を出し慣れている従業員を選びました。なぜなら、出社と在宅勤務のハイブリッドワークになり、発災時に別部署の従業員にも指示を出す必要が生じたからです」と説明する。
この基準を用いて、入居するオフィスビルのフロアごとに2人ずつで担当していた自衛消防組織の通報連絡班と避難誘導、初期消火、応急救護の担当者を入れ替えていった。さらに、新型コロナ流行の長期化を踏まえて実施した2段階目の変更は、自衛消防組織内の役割分担だった(冒頭の図「2段階変更後の自衛消防組織体制」)。
一般的に自衛消防組織は、統括管理者と避難誘導、初期消火、通報連絡、応急救護の役割で構成される。メンバーは、それぞれの担当者として固定されているケースが多い。しかし、カカクコムではその壁を取り払った。一人であらゆる役割をこなせる「マルチタスク」的な体制へと移行したのだ。「そもそも一人一役である必要があるのか。どの役割でもこなせる人材を多数揃えておくほうが、発災時に必要な人数を確保できる確率は高くなる。さらにそれぞれの役割が、バッティングするわけでもない」と永井氏は説明する。
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