2019/06/21
レジリエントな社会って何?
共通の組織資本の作成が災害対応を加速させる
これまでご紹介した事例においては、失われたデータをサーバからサルベージ(復旧)したり、町に一時立ち入りの際に避難前に設置しておいたバックアップデータを持ち出したり、職員が避難前にCSVに吐き出してきたりと、さまざまな方法で組織資本が復活を遂げていきました。このデータを基に、別の自治体からの応援職員を含めた自治体職員が避難所における安否確認業務や窓口業務を開始していきました。その後、各現場では、紙や、それぞれ使い慣れたシステムを使って避難者名簿や窓口での対応記録などが作成されていったのです。結果、バラバラの形式の名簿がたくさん生まれ、後々の統合作業が大変になりました。
さらに、大槌町の事例では、住民基本台帳ネットワークシステムの復旧において、高いセキュリティーがハードルになったことをご紹介しました。大槌町長選挙実行に必要な選挙人名簿作成のために早急な復旧が求められていましたが、住基ネットにある震災後の人の異動データがなかなか取得できなかったのです。
データの存在と、そのデータをどのように取り扱うかが、その後の復旧プロセスを左右します。
共通の組織資本作成のルール
前回、データの取り扱いには組織内で共通のルールを設けるべきと述べましたが、このようなルールは明文化、あるいはマニュアル化して、セキュリティーを強化しながらも誰でも使える形で保管しておくことが重要だと思います。その上で、災害対応に関わる多様なステークホルダー間における共通の組織資本を作成することができれば、柔軟な災害対応が可能となります。共通の組織資本を作る際には、何か“指針”のようなものがあると良いはずです。
ここでは、“指針”の方向性を示す考え方として、4つのUから始まる単語を紹介したいと思います。Universality(汎用性)、Ubiquity(遍在性)、Uniqueness(唯一性)、Unison(一貫性)です(表)。

レジリエントな社会って何?の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/16
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方