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今日の企業は、請求処理・顧客対応・データ分析・マーケティングなど、業務の多くをソフトウェア・アルゴリズム・人工知能(AI)によって自動化している。これにより業務は効率的かつ精密に、また大規模に処理可能となる一方で、必ずしも法的コンプライアンスを保証するものではない。とりわけ自動化が適切に管理されていない場合、善意で始めた技術導入が、規制当局による調査・集団訴訟・企業イメージの毀損など、重大な法的問題へとつながる可能性もある。

自動化されたシステムが企業の業務を代行する以上、その行動の結果については企業が法的責任を負うことになる。特に個人情報の保護・消費者保護・契約の履行といった分野では、自動処理の透明性や管理が不十分であれば、意図せぬ違反が生じ得る。

データプライバシーの複雑な課題

自動化とプライバシー規制の整合性は、最も困難な課題の一つである。米国のCCPAやCPRA、EUのGDPRなどは、個人データの収集や処理に関して厳格なルールを設けており、同意の取得やオプトアウトの権利も明確に規定されている。

しかし、自動化により人間の介在がない状態でユーザーデータが収集・共有されることが増え、法的な透明性が損なわれがちである。特にバックグラウンドで動作するマーケティング・エンジンや推奨システムでは、ユーザーが知らない間にデータが利用される場合も少なくない。

実例として、2022年にカリフォルニア州司法長官は、コスメ販売大手セフォラに対し、消費者のオプトアウト要求に対応できなかったことを理由に120万ドルの支払いを命じた。同社の広告システムが、ブラウザから送信されたグローバル・プライバシー制御信号(GPC)を認識せず、結果的にプライバシー権侵害とみなされた。企業に悪意はなくても、システムの不備や見落としが法的制裁に直結する事例である。